デビッド・チャウム「DigiCash」からBitcoinまでの歴史|「xx Network」や「ミックスネット技術」によるプライバシー保護の今後
Hi friends 👋,
・デビッド・チャウム「DigiCash」からのデジタル通貨の歴史
・xx Network:メッセンジャー・決済市場における量子耐性とプライバシー保護の実現
・Nym/HOPR:ミックスネット技術と監視社会
今回は上記の内容を紹介し、プライバシー保護と決済の今後について考察していきます!
将来的に暗号資産が「通貨」として機能する機会が増えた際に、プライバシー保護は大きな課題とされ「xx Network」「ミックスネット技術」がどのように社会実装されるのかなどとても気になるところですね✌️
■デビッド・チャウム「デジキャッシュ」からのデジタル通貨の歴史
デビッド・チャウムは、1970年代から「暗号化を使用して、人々が自分のデータを操作できるようにする」ことを目指し、1981年には暗号技術「ミキシング」をテーマにした論文“Untraceable Electronic Mail, Return Addresses, and Digital Pseudonyms,”を発表。
https://chaum.com/wp-content/uploads/2021/12/chaum-mix.pdf
そして、1982年には、公開鍵と秘密鍵の技術の進歩について説明した論文「Blind Signatures for Untraceable Payments」を発表。
・Blind Signatures(ブラインド署名):オンライン取引を行うユーザーの完全なプライバシーの確保
・新しいタイプの暗号化:デジタル通貨にプライバシー、支払いの証明、資金の凍結の特性を付与
・電子決済システムの普及と「プライバシーの侵害、犯罪的使用」についての懸念
当時からデビッド・チャウムは、上記の発明/考察をしており、トルネードキャッシュ問題にあったように「プライバシー保護」がデジタル通貨の初期の歴史においても重要であったことを示唆しています。
1989年には「DigiCash」を創業し、銀行や政府がオンラインで行われた個人の支払いを追跡できないようにする暗号プロトコルのシステムの構築をスタートし、1989年にゼロ知識証明に基づいた匿名性のデジタル通貨「eCash」を実現。
・eCashソフトウェア:ユーザーのローカル環境において銀行によって暗号化されたデジタル形式でお金を保管。
・RSAブラインド署名:出金/支出トランザクションの間のリンク不可能性を実現
・公開鍵デジタル署名方式によって確保されたセキュリティ。
しかし、当時はネット通販などオンラインでの少額決済は普及していない状況であり、クレジットカード決済時にセキュリティ機能を実装する方法が広く普及したために「DigiCash」は1998年11月に破産申請を行う形で、その役割を終えました。
デビッド・チャウムによる「DigiCash」の取り組みは時代を先取りしすぎていたと言えますが、Vitalik ButerinがEthereumのWhitepaperで「ブラインド署名」からビットコインにいたるまでの歴史について記したように40年前から連綿と続く暗号の歴史が、現代のCryptoの発展に繋がっています。
分散型デジタル通貨の概念や、資産登録などの代替アプリケーションは、何十年も前から存在しています。
1980年代と1990年代の匿名のe-cashプロトコルは、Chaumianブラインドとして知られる暗号プリミティブに主に基づいており、高度なプライバシーを備えた通貨を提供していましたが、中央集権型の仲介者に依存しているため、プロトコルはほとんど牽引力を得ることができませんでした。
1998年、Wei Daiのb-moneyは、計算パズルと分散型コンセンサスを解決することでお金を生み出すというアイデアを導入する最初の提案となりましたが、分散型コンセンサスを実際にどのように実装できるかについての詳細はほとんどありませんでした。
2005年、Hal Finneyは「reusable proofs of work」の概念を導入しました。これは、b-moneyのアイデアをAdam Backの計算困難なハッシュキャッシュ パズルと共に使用して暗号通貨の概念を作成するシステムですが、バックエンドとしてトラステッド コンピューティングに依存することで、再び理想には達しませんでした。
2009年には、分散型通貨が、サトシ・ナカモトによって初めて実際に実装され、公開鍵暗号を通じて所有権を管理するための確立されたプリミティブと、「プルーフ・オブ・ワーク」として知られるコインの所有者を追跡するためのコンセンサスアルゴリズムが組み合わされました。
https://ethereum.org/en/whitepaper/
■xx Network:メッセンジャー・決済市場における量子耐性とプライバシー保護の実現
現在、Meta社等が提供する暗号化メッセンジャーアプリにおいては、ユーザーの「デジタルメタデータ」をそのまま残すことができ、収集したメタデータを販売することができることに大きな危険性があると考えられます。
現在、デビッド・チャウムは、量子耐性とプライバシー保護を重視したレイヤー1のブロックチェーン「xx Network」を構築し、1970年代に開発したミキシング技術を改良して「デジタルメタデータ」を排除することで、ユーザーの身元を隠すために高度な暗号化を使用した「xx Messenger」を開発提供しています。
https://twitter.com/xx_network/status/1486006159681097731
・xx Messengerの特徴
メタデータシュレッディング:「xx Messenger」を使用すると、誰と通信しているのか誰も知ることができません。「xx Network」は、ランダムに選択された世界中のxx Networkノードを介してメッセージを混合することにより、この情報を細断処理し、オブザーバーが通信を追跡することを不可能にします。
量子耐性: 量子コンピューティングの進歩により、他のメッセンジャーを介して送信されたメッセージは、最終的にさかのぼってデコードおよび分析されます。他のプラットフォームとは異なり「xx Messenger」は量子耐性があり、持続するように構築されたプライバシー保証を備えています。
完全な分散化: 「xx Network」は、世界中の 80 か国以上の数百のノード オペレーターによってホストされている透過的なオープンソースブロックチェーンです。ノード間で少なくとも5回のランダムホップを行うメッセージにより、各メッセージは、アドレスへの数千億の一意のパスから 1 つを選択します。
https://apps.apple.com/app/xx-messenger/id1593670957
「xx Network」は、PoSやPoWではなく、「novel quantum-resistant consensus protocol 」を採用しており、量子安全技術を維持しながら、分散化、速度、およびプライバシーを同時に達成する最初のブロックチェーンであり、決済プラットフォームの提供も想定しています。
現実的な問題としてミキシングによるマネーロンダリングや米ドル経済圏外での暗号資産決済が増加したことで、米国による規制強化が行われましたが、「xx Network」によるメッセンジャー・決済市場における量子耐性とプライバシー保護の実現がどのように社会に変化をもたらすのか大きな期待が寄せられています✌️
「xx Network」上で構築された決済プラットフォームにおける暗号資産決済などブロックチェーンの次の未来における技術革新と規制との戦いがどのように議論されていくのか今から楽しみですね。
https://decrypt.co/95109/david-chaum-from-inventing-digital-cash-to-pioneering-digital-privacy
■Nym/HOPR:ミックスネット技術と監視社会
「Nym」は、ミックスネットと呼ばれる多層ネットワークを介してインターネットトラフィックを暗号化し、中継する技術ことによってネットワーク層でプライバシーを保護するプライバシープラットフォームです。
・ミックスネット:ミックスネットの各レイヤーで、ミックスノードはインターネットトラフィックを他のユーザーのトラフィックと混合し、メタデータを特定できないようにします。「Nym」のミックスネットはLoopixデザインの修正版に基づいています。
・プライバシー強化署名方式「Coconut」:リソースへのアクセス制御に関する考え方をユーザーが誰であるかに基づくIDベースから使用権に基づくプライバシー保護のパラダイムにシフトすることを可能にします。
・Sphinx:バイナリレベルで相互的に区別できないようにするレイヤーで暗号化された情報パケットを送信する方法。
・Nymブロックチェーン:汎用のCosmWasm対応スマートコントラクトプラットフォーム。ミックスネットを追跡するスマートコントラクトのホームです。
上記の技術を活用し、「Nym」は、暗号資産のトランザクション/電子メール/インスタントメッセージングなどに対してより強力なネットワークレベルのプライバシーを提供することができます。
カバートラフィックとタイミングの難読化を追加した設計の「Nym」のミックスネットは、ブロックチェーン技術とインセンティブによって分散化されており、VPNやTorとは異なる形でネットワークの匿名性と監視への耐性を保証しています。
「HOPR」は、暗号学者とブロックチェーンの専門家による経験豊富なチームによって開始されたスイスとシンガポールを拠点とするプロジェクトです。
HOPRネットワークは、ミックスネット技術を活用し、個々のデータパケットが追跡可能な情報を明らかにしないようにメタデータを隠すメッセージングプロトコルとユーザーによって管理される分散型ネットワークによってネットワークレベルのプライバシーを提供するように設計されています。
「HOPR」の分散型インセンティブミックスネットは、IPアドレスなどあらゆるメタデータを匿名化し、通信やデータ送信について第三者が知ることを不可能にすることから下記のユースケースの創出が期待されています。
医療技術:センサーや健康アプリからのメタデータの完全匿名化。
暗号資産:ユーザーのIPアドレスやメタデータとウォレットアドレスの照合による身元確認の防止。
分散型エネルギー:適切価格/量のエネルギー転送確認による悪意のある価格操作の回避。
参加してノードを実行したい人なら誰でも参加できる分散型のインセンティブ付きピアツーピアネットワークであるHOPRネットワークは、ネットワークの管理を任されているHOPRアソシエーションのメンバーでさえ、そのトラフィックを制御、検閲、傍受することはできません。
「Nym」と「HOPR」の事例については、「xx Network」と同様により高度なプライバシー保護のあり方を提示しており、社会的な有用性の検証とともにネット上での「監視」を当たり前としない取り組みとして大きな役割を果たすことでしょう。
「プライバシーとは全ての人から身を隠すことではなく、オープンにしたい情報を選び抜いて開示することだ。規制によって監視されなくなるわけではない。ただ苛立たしいポップアップが増え、ほんのわずかな罰金が導入されただけだ」
Nymを開発するNymテクノロジー社CEOであるハリー・ハルピン氏は上記のように述べており、健全な市場形成に向けた相互的な理解の醸成が期待されます✌️
まとめ
・デビッド・チャウム「デジキャッシュ」からのデジタル通貨の歴史
・xx Network:メッセンジャー・決済市場における量子耐性とプライバシー保護の実現
・Nym/HOPR:ミックスネット技術と監視社会
について解説してみました!
プライバシー保護とマネーロンダリングといった議論だけではなく、デジタルメタデータの管理や監視社会との戦いに関する取り組みにも注目ですね。
暗号資産決済領域においては、プライバシー保護を目的にした匿名性を重視した技術を採用すべきではあるが、どのようにしてマネーロンダリングを防止すべきかといった課題について今後も議論がなされていくことでしょう。
これまでのデジタル通貨とプライバシー保護の歴史をふまえて、今後のCrypto市場における技術革新について今後も考察していければと思います✌️