モナコインはどれくらい攻撃されやすいか

モナコインは、かつて攻撃を受けました。結果、 Livecoin という海外の暗号通貨取引所が被害を受けました。

ええ。被害を受けたのが明らかになっているのは Livecoin だけです。MONA を上場している取引所はたくさんあるのに。何故でしょうか。おそらく Livecoin そのものが諸々脆弱だったからです。仮説を裏付けるかのように、2020年末に Livecoin は取引所全体を乗っ取られ、アクセスできなくなっています。(一説にはLivecoinの自作自演とも言われていますが真実は判りません。いずれにせよコンプライアンスがダメだったのは確かでしょう)

モナコインのノードにはバグはありませんでした。仕組み通りに動いた結果であり、これを持ってモナコインの開発力を云々言われる筋合いは、実はありません。

ただし「そういうことにしたい人」たちにとっては、格好の材料となっています。

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モナコインへの攻撃で用いられた手法は、51% 攻撃とも、もう少し低いハッシュレート(25%程度)で行えるセルフィッシュマイニングとも言われていて、たぶん結論は出ていないものと思います。

攻撃手法がいずれであったにせよ、攻撃者がある程度のハッシュパワーを得れば成功する類の攻撃です。

モナコインに限らず、他のコインへの類似攻撃でも、一時的にハッシュパワーを売り買いできる市場(いわゆるクラウドマイニング)の存在が攻撃コストを下げていると言われています。

攻撃者にとっては、その攻撃の瞬間だけハッシュパワーが得られればよいわけです。マイニング用のハードウェアの購入は、攻撃に要するコストにしかなりません。ずっと掘り続けるなら、それは攻撃者ではなく普通の採掘者ですし。

もしかしたら単位時間あたりではちょっとだけ割高でも、ハッシュパワー(つまりASICやGPU)を貸し出してくれる人から、お金を出して借りたほうがコストパフォーマンスが良くなります。

モナコインの採掘アルゴリズムは Lyra2REv2 で、ビットコインやイーサリアムといった有名どころの採掘アルゴリズムとは異なります。クラウドマイニングは他人の計算資源を買ってくるので、売り手の採掘環境が Lyra2REv2 に対応していなければなりませんし、売り買いのマッチング業者が  Lyra2REv2 に対応している必要があります。仮想通貨交換所がモナコインを上場していなければ、その交換所でモナコインを入手できないのと同じ理屈です。

当時のモナコインにとっての不幸は、Lyra2REv2 には ASIC が存在せず、GPU を機材として選ぶのが一般的だったことでした。GPU は Lyra2REv2 以外の採掘にも対応できるので、GPU を持っている売り手は、その時々で需要のある採掘アルゴリズムでハッシュパワーを売り出します。つまり Lyra2REv2 への需要があれば、Lyra2REv2 のためのハッシュパワーが集中します。攻撃者にとっては最高の環境です。

最高の環境が整ったら、あとは攻撃あるのみです(攻撃者にとっては)。

かくして実行されました。ああ、モナコイン、哀れなり。

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では、現在はどうでしょうか。現在も攻撃は簡単でしょうか。

まず、あの攻撃の後に起きたことを3つ紹介しましょう。

① まず、モナコインに対しパッチが当たりました。バグが有ったわけではありません。もし攻撃が検知されたときに、分岐したモナコインのチェーンのどちらが正しいのかを示すメッセージが流れる、という機能を追加するパッチです。

このパッチで追加された機能は軽々しく使えるものではなく、非中央集権性を著しく損なうものではあります。しかし、再びの攻撃者に対するメッセージとして機能します。無策でいるつもりはないぞ、と。

② そして、Lyra2REv2 対応の ASIC が登場しました。その後も性能向上が続いています。

③ ASIC を敵視するコインが、その採掘アルゴリズムを Lyra2REv2 以外に変更しました。

GPU、ASIC どちらが採掘機材として良いかというのは、コインの開発者の間で意見が分かれるところで、一概に答えは出ません。ともかく、Lyra2REv2 採用のコインは減りました。モナコインは残りました。

そして、ASIC は、専用機材だけあって GPU よりも高性能です。GPU で Lyra2REv2 のハッシュパワーを売っていた人々は、ASIC に掘り負けるようになり採算性が悪化し、Lyra2REv2 ではない採掘アルゴリズム向けにハッシュパワーを売るようになりました。

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現在のモナコインを支えるハッシュパワーを、時系列グラフにしてくれているサイトがいくつかあります。

https://www.coinwarz.com/mining/monacoin/hashrate-chart/2020

そしてスクリーンショット。

コインの値段とハッシュレートとは、概ね相関します。電気代もかかりますので、価格が低いなら採掘者も頑張らない。幅はありますが、ざっくり 100 〜 150TH/s くらいでしょうか。

さて Lyra2REv2 のハッシュパワーを買おうとしたとき、いますぐでどれくらいの TH/s を買えるでしょうか。

4 TH/s に満たない程度です。4% 以下。

これでは 51% 攻撃はおろか、セルフィッシュマイニングさえにも遠く届きません。

無理です。ハッシュパワーを用いた攻撃は。

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思ったより長文になりましたが、あと少し。

ここまで、「モナコインはハッシュパワーを使った攻撃に対し、既に安全」というシグナルだけ伝えてきました。本当でしょうか。

リスクがないかと言えば、あります。

既に「コインの値段とハッシュレートは概ね相関します」とさらりと書きました。MONA の価格が上がれば、ASIC より劣勢であっても GPU を Lyra2REv2 に振り向けたほうが、ハッシュパワー提供者は儲かるかもしれません。そうするとクラウドマイニングを使った攻撃が行いやすくなる可能性は、あります。

しかし一方で、ピークで 300TH/s 程度のハッシュパワーが観測されています。

おそらく「今は電源を入れていないが価格次第では稼働を始める ASIC」が待機しているはずです。これは完全にあてずっぽうですが、VIPPOOL 辺りに。(繰り返します。この段落に限っては、証拠なし、あてずっぽうです。)

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というわけで「51% 攻撃云々」は、ほぼ杞憂です。

息を吐くように嘘を振りまく逆神インフルエンサーは、それを認めないかもしれませんが。

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