MakerDAOと信用創造の考察

MakerDAOと信用創造の考察

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はじめに
MakerDAOはETHを担保にステーブルコインDAIを発行・貸し出すことができるレンディングプラットフォームですが、今回はDAIを使って信用創造が可能かについて考察してみます。


信用創造の定義
信用創造・貨幣創造については様々な議論や論争が繰り広げられてきており、解釈・定義はいくつかあると思います。今回は2つの信用創造の定義を以下に引用します。


定義①

信用創造とは、銀行は集めた預金を元手に貸出しを行っているのではなく、銀行が貸出しの際、借り手の預金口座に貸出金相当額を入金記帳することで、銀行保有のベースマネーといった原資を事前に必要とせずに、何もないところから新たに預金通貨を生み出すことである(Wikipedia


定義②

銀行などの金融機関が本源的な預金を貸し出し、その貸出金が再び預金されてもとの預金の数倍もの預金通貨を創造すること。(デジタル大辞泉

 

ここで、「信用創造」という言葉は英語ではなんと呼ばれているか知っていますか?英語では「Money Creation」と言われています。直訳すると「貨幣創造」なんですね。以前、私の記事でも紹介したイギリス中央銀行の「Money creation in the modern economy」では、「現代の貨幣制度では貸し出しによって預金が生まれる」と解説されていました。これは定義①に当てはまります。

また、皆さんはゴールドスミス・ノートというのをご存知でしょうか?17世紀半ばに金匠が金を預かる際に預り証(ゴールドスミス・ノート)を発行し、これがお金として流通したのが紙幣の始めだとされています。さらに、この金匠は、預かった金以上の預り証を発行しても皆が一斉に引き出さなければ問題がないのでは?と気づきます。そして、実際の金以上の預り証(負債証券)を発行して貸し付けたのです。これが部分準備預金制度に基づく金本位制「信用創造」の始まりとされています。この話も原資が必要ではありますが定義①に当てはまりそうです。

現在の通説は、定義①にある「貸出しから預金が生まれる」のようです。では、私たちが学校で習ったような定義②は間違っているのでしょうか?それについては以降で見ていきます。


MakerDAOによる信用創造
それではここからはMakerDAOによる信用創造について見ていきましょう。前提条件として、担保率は150%で、1ETH=$150で価格が安定しているものとします。ここからまず、1ETHを担保に100DAIを借り入れます。借り入れたDAIを取引所で0.67ETHで交換します。交換したETHを担保に66.67DAIを借り入れます。そして、借り入れたDAIを0.44ETHで交換し、それを担保に44.44DAIを借り入れます。

この時点で、ETHの合計が2.11ETHになりましたが、これは担保であるため利用・流通でません。そのため単なるETHのレバレッジをかけたロングポジションとしてみなされます。ではDAIはどうでしょうか?手元に残ったのは44.44DAIですが、残りの166.67DAIは市場で流通しているので、1ETH=$150を元手に、211.11DAIを生み出したと見なせるのではないでしょうか?これは、上記で見た定義②に当てはまるように思われます。信用創造は、原資があるかないかに関わらず、「原資以上の預金を生み出すこと」であれば、これも歴とした信用創造ではないでしょうか。

 

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