NFTと春の夜の夢:まさに大きなにわとりにおそわれる心理状態とは
はじめに
ほんと、うかつでした。NFT上のアートなるものの存在を知って、23日と18時間ほどです。美術関連のしごとを経験しながら、この動向を耳にしたときの新鮮なおどろき。それがさめないうちにとNFT上の芸術に関してSpotlightに記事をふたつ書きました。
さらに先ほど足の小指を痛いほど打ちつけ、頭の中に星がきらめき新たな考えが浮かんできました。痛みに耐えて原点に立ち返り、時間をまきもどし、2月末の知り得た当初を思い出して記そうと思ったのです。
OpenSeaをながめると:真正性
通常の業務をこなし寝る時間をとりのぞくと、NFTのアートに頭のなかをあずけたのは3月中旬のこの時点で、まだ合計数時間ほどでしょうか。
2月19日もそうでした。ここからはとりとめのない想念のため、まとまりがないのであしからず。
あっ、そうか。従来の画家のサインや落款。これらは鑑定が必要なほどのあいまいさ。そのみちの権威による箱書きや讃(賛)など惑わす要素(ときに讃のほうが価値があったりするもんだから)もいっぱいのはず。
鑑定家はそれなりの知識と経験が必要だし、美術の学識があってもそれなりの根拠を自筆とおぼしきサインに頼るのではこころもとない。真贋はのちの科学分析の進歩で覆されそうだし。
それに代わるのがNFTにおける真筆のお墨つき。
たしかにOpenSeaのてつづきを体験すると、それは担保されそうです。
もうひとつの視点:唯一無二性
この世の中にたったひとつしか存在しない、精一杯生きて得られたしるしの唯一無二性。3月12日の記事は哲学の視点からこちらにふれています。たしかに現実に存在はしてるんだけど。しかし版画って微妙。このあいだもシルクスクリーンや版画の贋作が世間を騒がせました。
やはり版画って微妙。原版を使ってのちの時代に刷ったものは、亡くなった作家の吐息がそのまま残っている気がします。
その息吹を表現できる刷り師の腕にもよるかもしれませんし、版画用インクやバレンの選択にも依存しそう。むしろ、画家の死後に刷ったもののほうができがよかったりして。
唯一無二についての問題点は、原本1作品に1つのデジタルコードしかありえないNFTのアートならば解消しそう。
何点もある版画、さらに
でも、そもそもNFT上のアートとして版画やリトグラフ作品はありえるのか、なさそうだけど。ありだとしてもどうあつかうべき?エディションナンバー(ED.No.)は?
絵画だってそうです。評判の作品は売れるので、画家は依頼に応じて何度も描くかもしれない。自分の到達点をめざすために描きなおしもするでしょう。モネの水連の連作など有名です。いずれもその作家の作品にまちがいはない。どれが基準になるのでしょう。
モナリザをダビンチは最後まで手元に置いて加筆していたそうですが、ほかに描いているかもしれない。じっさいにそうかもしれない作品だって世の中にはある。
絵画表現って、芸術表現って
絵画は経年劣化していくので、のちの修復の専門家による修復がおこなわれます。現在はルールにのっとり、加筆する場合でも後世の人々が判別可能な一定のルールのもとで行われています(先日、例外はありました)。
以前はそうでない場合がありそうです。悪意なくおこなったのでしょうが判別できるものか。
芸術の範疇をひろげて、音楽に当てはめるとわかりやすいです。演奏家や指揮者によって同じべートーヴェン作曲の演奏でもちがう。好みはわかれます。
そこへさらに唯一無二性をからめると…。問題がふくざつになりそうです。
あれっ?なんか変だ。それに比べるとNFT上のアートの絵画表現って、制限が多くない?
クリスティーズで…
ああ、出ちゃった。と思ったのが先日のニュース(美術手帖2021.2.23 https://bijutsutecho.com/magazine/news/market/23610)。
ついにここまで来たかという感じ。こうした定評(あくまでも世間での)のある場に取り上げられるとやはりおどろきです。世間もこの事象に注目してたんだと確認できました。
ビットコインで大騒ぎした2017年当時の金融や経済界の反応と似たものを感じました。大衆が注目し始めると動かざる負えない。その後の2018年初めといったら…。
まだ海のものとも山のものとも知れないうちだって、競売にかけられる対象になると思惑買いでせり値がつく。
おわりに
わたしは4歳のときに親の郷里に帰省。蒸気機関車(これすらおどろき)をおりると独特のにおい、牛豚鶏にあふれ、ハエのたかるたべものなど、ふだん住んでいる街とのギャップに混乱。
その夜寝床につき、屋根に届きそうなほどのサイズのにわとりに追っかけられ、つつかれ断末魔の叫びがあげたくてもあげられない、えにもいわれぬ夢にうなされました。
NFT上のアート作品。それほどの衝撃といっても過言ではありません。頭がさえてしまってよく眠れませんでした。走馬灯のように考えが湧き出てめぐります。春の夜の夢。
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