バイオフィリア第0侯 Vol.1 〜私とニホンミツバチの物語〜

バイオフィリア第0侯 Vol.1 〜私とニホンミツバチの物語〜

これは私と私の巣箱の中に住むニホン ミツバチと、それを取り巻く自然のお話です。 ミツバチたちの一年 を通した暮らしはその土地の環境に合わせますので、わたし の住む岐阜県郡上市より南の方や、 北の方で は時期的に若干のズレがあったりと少し違うかもしれません。また、蜂との関わり方も人それぞれで、見 る視点の違いにより、 少し違和感をもたれる方もいらっし ゃるかもしれません。 2005 年から始まったニホン ミツバチとの暮らしの中で一つだけ私が知ったことがあったと すれば「わ たし は何も知らない」ということです。 私にできることは「模索」し続けることだけではないかと思います。 お話の中で寄り道を沢山してし まうかもしれませんが、 小さな世界のおとぎ話のように読んでいただけた ら嬉しい です。 

2019年2月 、私はニホン ミツバチのいない養蜂家になりました。秋までは居た最後の一群が越冬でき ず死んでし まいました。 4年程前、この地域のニホン ミツバチは激減しました。そう感じるのは私だけではないようで、蜂仲間で もある地域にいらっし ゃる先輩方も同感であった様でし た。郡上市から車で1時 間半ほど南方にある岐阜 市あたりの方々はこの原因について、ダニによるものだと いう意見が多い様でし た。ミツバチが減りだし た頃から1〜2年 前、岐阜県飛騨地方から私が暮らす郡上にかけてマイマイガが大量発生しました。コン ビニやドラッグストアの様な蛍光灯が煌々とする場所などは特に集まっており、 ブライン ドを閉めて営業 する程でし た。産卵時期には至る所に卵が産みつけられ次の年に孵化するため2年 ほどこの地域はマイマ イガに悩まされる事となりました。ホームセン ターなどでは殺虫剤のコーナー が普通の何倍も多く設けら れ通常でし たら使用しない量の殺虫剤が一般家庭でも使われる事となりました。そのタイミン グがこの地 域のミツバチの減少と重なってし まったのは偶然なのだろうか。 私にはわかる術はありません。しかし蜂との暮らしを続けてきた事でこの時期に蜂やその他の昆虫たちに とって何らかの異常事態が起こったことを感じたと いうことです。 

いつもなら春になると女王が子を生み出し蜂の数がどんどん増え4月の中頃には巣箱から雄蜂も飛ぶよう になります。 働き蜂が巣の先端に王台と言われる部屋を作り、 そこに産み付けられた幼虫だけに働き蜂は ロイヤルゼ リーという分泌物を与えます。 その王台から生まれたものが女王となります。 王台はいく つか作られますが、 その春王台に産み付けられた卵の中で1番 先に生まれた女王が、 その他の 王台の女王を殺して君臨するのだそうです。 同時に生まれた場合、戦いに勝った方が女王になると言われ ます。 女王の誕生はシンプルに言えばこんな感じではないでし ょうか。 残念ながら、私は単なる「蜂と暮らす人」 であります。 学者さんでもなくミツバチでもない以上、こうである!という表現でお伝えするべき ではな いと考えています。 長年ミツバチと携わる上で学んだこと、感じたこと、経験したことをお伝えしたいと 思います。 

女王が誕生してから少し暖かくな ると、黄色い巣のカケラが守門のあたりに散らばります。 どうやら雄蜂 が羽化したようです! 雄蜂は分蜂の少し前に生まれます。 雄蜂が産み付けれる巣のサイズ は働き蜂の幼虫が産み付けられる巣よ りも若干大きなサイズ であると言われます。 女王は後ろ足で巣のサイズ を測りながら、普通サイズ の巣に は働き蜂の幼虫、大きい巣には雄蜂の幼虫というように産み分けていきます。 そういうわけで、春の分蜂 時期の少し前から、分蜂時期、場合によっては秋ごろまですこし大きいサイズ の巣が作られ、そこから雄 蜂が生まれます。 雄蜂は基本的には何もしません。所謂「ヒモ」のような人生を送ります。 食事は働き蜂 から分けてもらい、 他の群の女王と交尾するためだけに存在します。 見た目も働き蜂とは異なり、 目は異 様に大きくて身体は真っ黒でまるでハエのようです。 まさにドローン。 ぶーーん!と大きな音を立てて飛 ぶ様が似ていることからドローン はDRONE (雄蜂)と名つけられたとか。 蜂の針は産卵管からできているため雄蜂は針を持たず刺すことはありません。交尾の時期が過ぎ、なにも せずブラブ ラしている雄蜂は次第に食べ物を分けてもらえなくな り切ない一生を終える事となります。 ------ ミツバチの生活は何だか人間の日常を覗いているような気持ちになることがあります。 巣門を行き来 するミツバチたちはそれぞれに日常ドラマがあるようです。 その様子を小人の国を覗く巨人のように私は 観察します。 何かを話し込んでいるような2匹 がいたり、 巣の中に入ろうとするアリを追いかけていたり 巣門で繰り広げられるドラマは季節と共に変化するものもあります。 春に雄蜂が見られるのもその一つで す。 四季の移り変わりと共に順にお話を進めましょう。 

マイマイガの大量発生以前、私の巣箱で暮らしていたミツバチは20 〜25 群いました。1群 は大体15 000匹ほどといわれます。  群によって性質も様々でおとなしい 群もあれば勢いのある群もあります。 当然勢いのある群は蜜もたくさ ん貯めます。 現在の養蜂でよく 使われるセイヨウミツバチに比べ穏やかであると言えます。 勢いある群でも何かしらの 原因により急に居なくな ったり全滅してし まうことはありますが、 突然起こりうる全滅の危機がなければ 越冬する率は小さな群より、 大きく勢いのある群のほうが高いと言えるでし ょう。小さな群は越冬できず 死んでし まうリスク は高いので、秋になっても小さいままの群があれば、この群は越冬できないかもしれ ないな・・と思うのです。 これは自然淘汰であり、 ある意味仕方がないと捉えて居ます。 1年 を通すと私の巣箱で暮らす蜂たちは、春に20 〜25 群ではじまり、 何らかのアク シデントで15 〜 18 群になり、 冬が来て越冬できず全滅する群があり、 12〜15 群が何とか越冬し春を迎え分蜂時期に また20 〜25 群に増えるというサイ クルでし た。 

つづく

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山奥の地元でニホンミツバチと暮らす人たちです。

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