「Resistance Money」感想②

「Resistance Money」感想②

「Resistance Money -A Philosophical Case for Bitcoin-」を読んでの初心者観点での感想を投稿していきます。3章Where Bitcoin Fitsが本記事の対象です。前回記事(感想①)は以下参照。https://spotlight.soy/detail?article_id=2huq894yl

【目次】

  1. ビットコインは貨幣史における先祖返りか?
  2. ビットコインと電子マネーって何が違うの?に対する分かりやすい整理
  3. エスペラント語とビットコイン
  4. 絶対的権力は絶対的に腐敗する
  5. フォークは仮想通貨の発展に良いことなのか?
  6. その他雑感

 

【1. ビットコインは貨幣史における先祖返りか?】

ビットコインに対する批判としてよく耳にするもので、政府や公による裏付けやお墨付きがない、という指摘があると思います。そしてこの考え方の大前提として、そもそも貨幣は本質的に中央が発行し管理するもの、というイメージが一般的に強いと思います。

一方で歴史を振り返ると、古代の人々は貝殻や金銀に価値を見出して取引していましたし、近代でも米国では1792年の造幣法で米ドルを法定通貨としてもなお暫くの間、私的な通貨や金が貨幣として米国内で流通し続けていたようです。大事なのはその貨幣を交換手段として人々が受け入れているかどうか次第であり、貨幣が貨幣であるために政府の承認は必ずしも必要ではないようです。

 貨幣の本質は共同幻想を受け入れるか否かであり、法定通貨もビットコインもその点で違いは無い、というのは冒頭の批判に対するビットコイナーの反論としてよく耳にします。本書のスタンスも基本そうなのですが、上記で言及された貨幣史も合わせて念頭に置くとより認識を深く広く捉えられそうだなと感じました。

これは私個人の意見ですが、中央集権化が進み中央政府の発行する通貨のみが唯一支配的な価値の交換手段である、という現代の状況自体がそもそも長い貨幣史の中で異端であり、集権的機関に依拠しないビットコインは長い貨幣史における揺り戻しなんじゃないでしょうか?てっきりビットコインは集権的な貨幣に対するアンチテーゼとして生まれた、過去の歴史にない全くの新種の貨幣かと思いきや、長い人類の貨幣史を俯瞰すれば過去に数多生まれ消えてきていた貨幣達への回帰、先祖返りなのかもしれないなと感じました。

【2. ビットコインと電子マネーって何が違うの?に対する分かりやすい整理】

「ビットコインってTポイントや楽天ポイントとかとどう違うの?」小中学生やビットコインを全く知らない人からはこのような質問が無邪気に出てきそうです。

貨幣としてのビットコインの特徴を説明する上で、本書では他の主要なアセットとの比較整理が非常に分かりやすく説明されていたので、本書記載の内容を元に以下表にまとめてみました。 

分かりやすくするためにビットコインとは性質が異なる項目を薄いグレーにしました。上記整理の他にも各アセットごとの類似・相違点は沢山あると思いますが、ビットコインは他の資産や貨幣とは大きく異なる貨幣であることに気付かされました。

また、ビットコインは「デジタルゴールド」と例えられることが多いですが、このたとえのイメージで止まらず、更に一歩進んで金や他の資産や貨幣との類似点・相違点が世の中で言及されるようになると、よりビットコインの本質に対する正しい理解が進むなと思いました。

 

【3. エスペラント語とビットコイン】

リップルの方が手数料が安い、イーサリアムならスマートコントラクトもできる、なのに一見機能の劣るビットコインが何で圧倒的No.1の仮想通貨なのか?適者生存の世の中を生きている一般人が仮想通貨を見るとまず感じることだと思います。少なくとも私はそう思いました。

本書ではこれに対する答えとしてとても分かりやすい例えとしてエスペラント語が紹介されていました。英語や他の言語より機能的に優れた人工言語であるエスペラント語が結局のところ普及していないように、結局どんなに優れたものでも、利用者がネットワークとして広がらないことには繁栄し得ないようです。英語も、発音と文字が一致しなかったり、変則的な動詞の活用形があったりと色々不便ですが、それでも世界中の人が第一/二外国語としてまず学び話されているのは、それが既に多くの人に使われているからなのです(「ネットワーク効果」というらしいです)。

なぜ優れたアルトコインが生まれ、そしてフェードアウトしていくのか。勿論他にも理由はあるでしょうが、ビットコインが仮想通貨の王者である理由の一つが理解でき、そしてアルトコインに対する見方が変わる大事な観点でした。技術や機能では説明できない社会科学的な観点です。 

ではそのネットワーク効果を外ならぬビットコインが発揮でき、エスペラント語のように死語にならなかったのはなぜか?思うに、ビットコインを発明し、その最初期に普及と啓蒙を進めてネットワークを構築した過去の賢人たちのおかげなのではないでしょうか?ビットコイン界隈の人はすごく内向的な内輪のサークルのイメージがありましたが、(少なくとも創成期の人たちは)案外そうではなかったんだなあと思いました。

 

【4. 絶対的権力は絶対的に腐敗する】

ビットコインは、maker、mediator、managerのもたらす問題や失敗に対する抵抗の通貨(resistance money)である、というのが本書の主張ですが、本書で書かれているこれら集権的組織の問題を読んでいると、19世紀の歴史家アクトンの「絶対的権力は絶対的に腐敗する」という格言を思い出します。説明するとこれは政治学の格言なのですが、権力というものは本質的にチェック&バランスの欠如や権力の自己増強といったものから逃れられないというものです。

まさに本書で述べられている、貨幣システムの創造における課題、つまり人に依拠しない便利なものを人がつくることの難しさ、に対しても当てはめることができる話だと思いました。まさに他の多くのアルトコインが直面している問題でもあると思います。その点、ビットコインの仕組みも勿論ですが、サトシナカモトが雲隠れしてくれていることもビットコインをビットコインたらしめてくれていますね。

本書にあった、サトシナカモトの無私の努力が逆に彼をビットコインの発展における王たらしめている、という話も面白い例えでした。

 

【5. フォークは仮想通貨の発展に良いことなのか?】

私はてっきり、ビットコインは過去にブロックサイズ論争の時くらいしかフォークしていないのかと思っていましたが、実はこれまでに約20回もフォークしているんですね。しかもこれは他の仮想通貨群と比べて(ビットコインの歴史の長さを加味すると)少ないとのこと。他の仮想通貨はもっと頻繁にフォークしているんだとは知りませんでした。せめてイーサリアムが約20回フォークしていると言うなら分からなく無いですが。。。

私が仮想通貨の世界で最初に手を出したのはビットコインでなくイーサリアムでしたが、選んだ最大の理由は、一般的に物事はカイゼンされ続けた方が良いだろう、イーサリアムはアップグレードが続いているという単純な考えからです。

一方でフォークというのは、結果せっかくそのブロックチェーンがそれまで積み上げてきたノードの群を2つに分割してしまうということであり、上で述べたネットワーク効果が損なわれます。またビットコインが積み上げてきた、自律的で不変な発行スケジュールへの信頼こそがビットコインの価値に対する信頼の源でもあります。フォークというのがたとえ技術的なカイゼンをもたらしたとしても、そのブロックチェーンが積み重ねてきた信頼の蓄積の針をはじめに戻してしまっているという指摘はいかにもビットコイナーらしいと思いました。

もっともイーサリアムの思想ではハードフォークが文化であり、またブテリンのような創設者が影響力を持っているという点を見ると、ビットコインとイーサリアムは同じブロックチェーンであって本質的に全く異なる思想の産物なんだなあと、両通貨の見え方が変わりました。

【6. その他雑感】

以下は枝葉的な話ですが、有料記事側に初心者観点での雑多な感想をメモしました。

  1. マイニングのすごく分かりやすいイメージ
  2. デカいは正義だと思っていた
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