東栄町古戸の花祭りの「榊鬼」「翁」「おちりはり」の舞い

東栄町古戸の花祭りの「榊鬼」「翁」「おちりはり」の舞い

東栄町古戸の花祭りの「榊鬼」「翁」「おちりはり」の舞い: 伝統芸能づくしの新春・オニオニパニック・弾丸ツアー(1月3日篇 その1)

 

仮面をかぶった姿を眺めること、それははっきり規定された信仰観念とは結びつかない、純粋に美的な経験であるにしても、そのときわれわれはたちまち「日常生活」のなかから連れ出されて、白日の支配する現実界とはどこか違った別の境界へひきこまれる。それは、われわれを未開人の、予供の、詩人の世界へ、遊びの領域へと導いてゆく。 

(出典: ヨハン・ホイジンガ (1973年) 「信仰と遊び」, 『ホモ・ルーデンス』, 中公文庫, 中央公論社, 69ページ.) 

 

先日、奥三河(愛知県北設楽郡(きたしたらぐん)東栄町(とうえいちょう))の古戸(ふっと)地区の花祭りの行事についての記事を投稿しました。

古戸(ふっと)地区の花祭りの行事は、1月2日の夕方ごろから儀式の舞いがはじまり、そこから、夜を徹していろいろな舞いが披露されていき、翌日の1月3日まで夜通しつづいていきます。

先日の記事では、古戸(ふっと)地区の花祭りの行事のうち、1月2日におこなわれたいろいろな舞いのなかの、「山見鬼」という舞いを紹介しました。

ですので、この記事では、その翌日の夜明け前ごろにおこなわれた、「榊鬼」(さかきおに)の舞いと、「翁」(おきな)の舞いと、「おちりはり」の舞いの、3つの舞いを紹介したいとおもいます。

 

「榊鬼」の舞い

この下の動画は、古戸地区の花祭りの儀式のなかの舞いのひとつである、「榊鬼」(さかきおに)の舞いの映像です。(2020年1月3日の午前3時半ごろの映像です。)

また、この動画の下の文章は、古戸地区の花祭り会場のなかにある「会所」と呼ばれる受付のところで販売されていた『古戸の花祭』という小冊子のなかの、「榊鬼」の舞いについての説明の文章です。

七、榊鬼

榊鬼の面型を付け、衣装は山見鬼と同じ。腰に扇、鈴を付け木の鉞を持って舞う。改め役との問答があり「へんべ」を踏む。三三九度の舞がある。伴鬼は二人。三ツ舞の剣の舞子が松明を持って伴舞する。 

(出典: 古戸文化財保護委員会(編集) (2014年) 『古戸の花祭』(第四版), 古戸花祭保存会, 8ページ.) 

 

 

「翁」の舞い

この下の動画は、古戸地区の花祭りの儀式のなかの舞いのひとつである、「翁」(おきな)の舞いの映像です。(2020年1月3日の午前4時半ごろの映像です。)

また、この動画の下の文章は、さきほどもお話した『古戸の花祭』という小冊子のなかの「翁」の舞いについての説明の文章です。

十一、翁 

翁の面型を付け、衣装は火の禰宜と同様である。左手に翁幣右手に鈴を持つ。改め役との問答がある。

(出典: 古戸文化財保護委員会(編集) (2014年) 『古戸の花祭』(第四版), 古戸花祭保存会, 9ページ.) 

 

 

「おちりはり」の舞い

この下の動画は、古戸地区の花祭りの儀式のなかの舞いのひとつである、「おちりはり」という舞いの映像です。(2020年1月3日の午前5時ごろの映像です。)

また、この動画の下の文章は、さきほどもお話した『古戸の花祭』という小冊子のなかの「おちりはり」についての説明の文章です。

九、おちりはり 

神子、おかめ婆娘、潮吹き、鼻垂らしがそれぞれの面型を付ける。衣装は、神子が衣に緋の袴、青い肩掛けをかぶり、頭に瓔珞、白足袋、草鞋履き。おかめの婆は、地味な着物の片袖を脱ぎ、腰巻を出し、包みを背負い草鞋履き。潮吹き・鼻垂しは、上衣、野袴、襷、脚絆、草鞋。神子は桧扇、他は左手に扇右手に鈴を持つ。道化の二人は、最初五平餅等を持って舞う。 

(出典: 古戸文化財保護委員会(編集) (2014年) 『古戸の花祭』(第四版), 古戸花祭保存会, 8~9ページ.) 

 

 

「神に捧げられた遊び、人がその人生のなかで尽くす努力のうち最高のもの」: 遊びと儀式は、おなじもの

ちなみに、ヨハン・ホイジンガという人が『ホモ・ルーデンス』という本のなかで語っていることのなかに、「遊びと儀式は、本質的には、おなじものである」というような考えがあります。

この古戸地区の花祭りの儀式や舞いについて、見たり考えたりしていると、『ホモ・ルーデンス』で語られているその考えと、そうした儀式のあいだに、いろいろとつながりをかんじるところがありました。(この話については、先日投稿した、比叡山延暦寺の鬼追い式の儀式についての記事でもお話したこととおなじです。)

(ちなみに、「ホモルーデンス」というのは、「遊ぶ人」という意味の言葉です。この言葉は、ヨハン・ホイジンガがつくった言葉です。)

この下の引用文は、ヨハン・ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』の本のなかで語られている話のなかの、「遊びと儀式は、本質的には、おなじものである」というような考えについての話です。

「遊びと儀式は、本質的には、おなじものである」ということを考えたときに、そこはかとなく、古戸地区の花祭りの儀式や舞いにもつうじるところがあるような気がします。

プラトーンの抱いていたような遊びの観念を、ひとたび自分のものとして身につけてしまえば、この点については何の疑問も起こるわけがない。神に捧げられた遊び、人がその人生のなかで尽くす努力のうち最高のもの、そうプラトーンは考えたのだった。しかしまた逆に、そう考えたからといって、これら神聖な秘儀を、論理的な知恵ではとうてい近づきえないものの最高の表現として評価することが、断念されたわけでもない。奉献行為はその重要な一つの面では依然として遊びの範疇に含まれることに変わりはなく、聖事の拠って立つ立場をそういうふうに決定してしまっても、それの神聖さの承認まで失われてしまうわけではないのである。 

(出典: ヨハン・ホイジンガ (1973年) 「遊びと密儀」, 『ホモ・ルーデンス』, 中公文庫, 中央公論社, 71ページ.)

 

 

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「これ好奇のかけらなり、となむ語り伝へたるとや。」 

 

(参考記事)
花祭り(奥三河・東栄町)についてのメモ
https://wisdommingle.com/?p=22385#jump_200102a

 

(この記事には、有料部分はありませんので、ご注意いただければとおもいます。m(_ _)m)

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たくさんの人が、目を輝かせて生きている社会は、きっと、いい社会なのだろうとおもいます。 https://yukinobukurata.bio.link/

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