分散化ソクラテス:(12)レトリック操作の例

分散化ソクラテス:(12)レトリック操作の例

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ボジショントークが使うレトリックのとても素朴な例を検討してみる。たとえば、「今後も株価が上がりつつける」という立場を広めたい人なりサイトなりを想定しよう。彼は、どんなニュースが出ても、読者に「でもなんだかんだ言ってまだ株価はあがるだろうな」という印象を与えたい。しかし、事実に反することは言いたくない。そして、世間で騒がれたニュースにはとりあえず何かコメントする必要もある。

その時、レトリックとして「マイナスの事実が出たときには、とりあえず最初にマイナス面にふれ、その後必ずプラス面にふれて終わる」という方法がある。たとえば、株価の事例なら、「バブル化を防ぐため中央銀行が金融引締めを早めるという噂がある」というニュースが出たとしよう。単純に考えれば、金融引締→株式投資に向かう貨幣量減少なので、株価は下がる、という方向のニュースだ。

しかし、印象を変えるレトリカルな操作としては、まず金融引締のニュースをそのまま記述し、その後、引き締め影響は限定的という識者の意見を追加したり、過去の事例で例外的に金融引締のニュースがあった後株価が上昇した時期の話を入れるなどをすることができる。つまり、記事の後半に「結局株価は上がる」という意見を入れる。

これが論理的ではなくてレトリカルな操作だという理由は、

- 後半に追加する主張は、前半と非常にゆるくしかつながる必要がない(最悪無関係でもいい)

-  論理的な順番は、ポジティブ→ネガティブでもいい。だが、最後の部分の印象を重くするためネガティブ→ポジティブにしてある

ということからだ。

この操作を「マイナス→プラス」型のレトリックと呼ぶことにしよう。このタイプの操作にファクトチェックで対応するのは非常に困難だ。なにしろ彼は事実をそのまま記事にしているともいえるし、意見をとりあげる順序などは、完全に執筆者の趣味である以上、レトリック操作をする意図があるかどうかも不明だからだ。

では、こうしたレトリック操作に対策はあるのだろうか?

冒頭画像
Rhetoric: a young woman standing in a decorated interior with a caduceus in her right hand and a closed fan in her left hand, from the series 'The liberal arts' (Les arts liberaux), 1633–35, Gilles Rousselet, French

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