ビットコインと火星

ビットコインと火星

先日ビットコインポッドキャストを聞いていたら、面白い記事が紹介されていたので読んでみました。タイトルは「Bitcoin Astronomy」で全3シリーズからなっています。興味のある方はぜひ原文を読むことをおすすめします。以下では、第1部を個人的に掻い摘んで纏めた内容になります。

概要は、ビットコインが法定通貨に取って替わるハイパービットコインゼーションが起きた後の世界で、人類が火星へ移住し始める時代ついて語られています。ビットコインが世界基軸通貨になっているので、火星へ移住した火星人も必然的にビットコインを使うことが予想されます。地球と火星との距離は光速でも片道3~22光分かかります。以下の図は、ビットコインのブロック生成時間が10分なのに対して、地球と火星との通信が最大で片道22光分かかることを表しています。しかし、惑星間インターネットという構想が実現すれば、通信の遅延は生じますが、それでも惑星間での通信が可能となり、火星からビットコインの送受信ができます。

火星におけるビットコインの問題は、遅延よりも地球との「距離」におけるハッシュの中心という概念による影響のほうが重大です。

「ハッシュの中心」という概念

原文では「Center of Hash」と表現されていますが、地球の重心にならって、ハッシュパワーの中心という概念です。以下の図は、マイナーAがマイナーBの2倍のハッシュパワーを持っていて、互いに距離が離れていた場合のハッシュパワーの中心を表しています。現状のハッシュパワーはすべて地球上に存在しているので、ハッシュの中心は地球の中心とほぼ同じか、少し中国大陸に近い場所となっています。

例えば、数%のハッシュパワーが月へ移動したとしても、月との距離は約1光秒なので、ハッシュの中心はほぼ地球の中心と重なるでしょう。

火星でのマイニングは不可能

例えば、ビットコインのハッシュパワーの10%が火星へ移動し、このハッシュパワーで火星からブロックを発掘して地球へ送信したとします。火星から地球へ伝送するのにかかる時間は最大22分なので、その間に地球のマイナーは数ブロック先を掘り当ててしまっています。ビットコインのコンセンサスルールは、最長のブロック(厳密には最大の仕事量)を正とするので、火星から伝送された新規ブロックは取り残されることになります。火星でのマイニングは、伝送距離が原因でブロックの同期ができず、発掘したブロックが取り残される可能性が大いに考えられます。そのため、火星ではマイニングをしてもブロック競争に勝つことができないのです。

以下の図は、地球との距離とハッシュパワーの関係を表したものです。地球との距離が近ければ、ハッシュパワーが10%以下でもマイニングが可能ですが、遠ざかるほど、ハッシュパワーが必要なのがわかります。黒い曲線は地球の「ハッシュの境界」を表していて、この境界線の内側ではマイニングをしても勝つことができません。

火星でのマイングで勝つためには40%以上のハッシュパワーが必要そうですね。このことから以下のことが言えます。

「距離」はマイナーを地球外生命から守ってくれる

火星でのマイニングは不可能でしたが、では火星人はビットコインにどのような価値を見出せるのでしょうか?原文では主に以下の3つを上げています。

  • ホドル
  • フルノードの運用とオンチェーン取引
  • ライトニングネットワークによるオフチェーン取引

マイングができなくてもフルノードを走らせて、ビットコインの送受信はできます。地球であれば最短で10分の承認時間ですが、火星ではさらに最大22分間の遅延が発生することに注意が必要です。また、ライトニングネットワークを活用したオフチェーン送金は火星では有効だと考えられます。ライトニングネットワークであれば、火星上のノード間送金であれば、地球のビットコインブロックチェーンと同期している必要はありません。火星での取引はすべてオフチェーンで行い、セトルメントレイヤーであるオンチェーンは一切使わない、という未来が来るかもしれません。

マスクコイン・ブロックチェーンの立ち上げ

火星人は地球人が支配しているビットコインとは別のマスクコイン(Elon Muskからの命名)なる独自のブロックチェーンを立ち上げるかもしれません。地球人が政府や既得権益から奪い取った民主的なお金という名の自由のように、火星人もビットコインという地球人の支配からの脱却を望み、自らのコインを鋳造したがるのは人間の欲望というより本能なのかもしれません。

もし新しいブロックチェーンを立ち上げるのであれば、慎重を期する必要があります。なぜなら、2140年の地球ではビットコインマイニングは最適化されており、貧弱なブロックチェーンやアルトコインはビットコインのハッシュパワーによって淘汰されてしまうからです。原文では「Hash Bomb」と表現していてるこのハッシュ爆弾は、空っぽのブロックをいくつも採掘して、火星へ送りつけることで、火星の未熟なブロックチェーンを攻撃する手法です。

しかし、火星人も馬鹿ではないので、ブロックチェーンの立ち上げ前には色々な試算をしているでしょう。以下の図は新しいブロックチェーンの立ち上げに関して攻撃者からの防御に必要なハッシュパワーをプロットしたものです。白線は地球上のマイナーを表していて、20%のハッシュパワーがあれば、それに比例して20%のブロックを採掘できます。一方、赤線は火星を表していて、新規ブロックチェーンの50%のハッシュパワーがあれば、50%をわずかに上回るブロックを採掘できます。これは火星から新規ブロックチェーンを立ち上げるため、ジェネシスブロックが発掘されてから地球へ伝送されるまでの遅延分有利となるからです。しかし火星のハッシュパワーが50%を下回った途端に採掘ブロック率が急激に減少してしまいます。これは上記でみたハッシュの境界の法則によるもので、距離による伝送遅延が少数派マイナーに不利に働くためです。しかし、逆に言い換えれば、50%以上のハッシュパワーが火星にあれば、地球からの侵略を防ぐことができます。

サトシは火星人だった?

ビットコインは最初の20年で大半のコインが採掘されます。これは初期のユーザーへのインセンティブとして働きますが、なぜSaotshi Nakamotoはさらに120年をかけてビットコインをマイニングさせようとしたのでしょうか?その頃までに火星への移住の準備を整え、マイニングに必要な資源や技術の発達を見込んでいるかのよう考えることはできないでしょうか?この仮説が間違っていたとしても、火星への移住が始まれば、マスクコインならぬ新たな火星の通貨が誕生していることでしょう。

まとめ

本記事では、光より速く伝わるものはないという相対性理論の下に、惑星間のような長距離間では、ハッシュの中心に近いマイナーの方が圧倒的にマイニングが有利であることが分かりました。また、ブロックチェーン同期の時間的制約は、距離がマイナーを地球外生命から守ってくれもし、その逆も同様であることが分かりました。

Satoshi Nakamotoが選んだ2140年までのマイニング期間は、私たちに与えられた火星への移住準備期間であるかのようです。きたる火星への移住に向けて、今から火星マイニングの準備をしてみてはいかがでしょうか。

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