送金技術としてライトニングの特徴

送金技術としてライトニングの特徴

本記事はLNコミュニティDiamondhandsによるライトニングネットワーク概観のレポートをベースにBitcoinMagazineへ寄稿した記事を日本語版として加筆修正したものです。

はじめに

クリプト界隈ではNFTやステーブルコイン、Defiなど次々と新しい用語やなんちゃって技術が生み出せれては崩壊していき、一喜一憂される昨今である。10年前にビットコインが生み出された理由を思い返すと、それは第三者機関を介さずに2者間での送金を可能にするためであった。また、ビットコインのジェネシスブロックに書き込まれた「タイムズ紙 2009年1月3日 首相は銀行への2度目の救済措置の瀬戸際」は、国家や金融機関などへの不信感とその権力へのアンチテーゼであるようにも思われる。ビットコインは分散ネットワークを取り入れたことで、2者間での送金を可能にしただけでなく、参加ノードが世界中に分散していることから、国家による検閲にも耐えられるようになっている。この検閲耐性を維持するためには高い分散性が必要であり、そのため、ビットコインには1ブロックのサイズが1Mバイト、1ブロックの生成時間が10分という制約が存在する。この制約により、送金が遅延したり送金手数料が高騰してしまい、日々の決済には不向きな側面がある。このような問題をスケーリング問題と呼び、これを解決する技術がライトニングネットワークである。

ライトニングネットワークとは

ライトニングネットワークは、L1であるビットコインを基礎としたL2技術であり、ペイメントチャネルとマルチホップペイメントと呼ばれる仕組みを使うことで、送金のスピードやコスト、処理性能、プライバシーの向上を可能とする。ライトニングのこれらの仕組みについては他の記事に譲るとして、ビットコインの本質でもある検閲耐性や送金性能について、他のブロックチェーンとの比較をしてみたい。

1.分散性と検閲耐性

ライトニングネットワークの特徴は、ビットコインのノードと同じく、ネットワーク参加者が各自ノードを持ち、それぞれがペイメントチャネルを管理するところにある。これは他のL2技術とは大きく異なる点である。例えば、イーサリアムのロールアップでは、ライトニングのようなペイメントチャネルとは異なり1つのコントラクトに対して、そのコントラクト参加者の状態がすべて管理される。また、その状態をオペレーターと呼ばれるノードが管理・更新しているわけであるが、このオペレーターが検閲される可能性や、コントラクトのバグによる攻撃の危険性がある。たとえイーサリアムやソラナがL1レベルで分散性が保たれており検閲耐性があったとしても、L2レベルではコントラクトのハッキングやオペレーターへの検閲・攻撃により参加者全員に影響を及ぼす可能性がある。

ライトニングでは、参加者一人一人がペイメントチャネルを作ることで、巨大な分散型送金網を作り上げる。そのため、ある参加者が検閲されたり、攻撃されたとしても、ライトニングネットワークが止まることはない。もちろん、ライトニングがハブ&スポーク型トポロジーを形成した場合、そのハブが検閲されれば一時的には送金ができなくなるかもしれない。しかし、参加者は別のペイメントチャネルを作ることで、送金ネットワークを構築していくだろう。これは、他のL2技術と比べて、分散性が高く、ゆえに検閲耐性があることを意味する。

2.送金性能

ライトニングネットワークを実感するための最良の方法は、実際に送金をしてみることである。その送金の速さと手数料の安さに驚くはずだ。ライトニング送金はペイメントチャネルを複数ホップすることで目的地へ送金する。経験則的には4,5ホップで送金ができる。ここで各ノードの性能にもよるが、1ホップあたり1秒とすると、4,5秒で送金が完了する。また、ゼロホップの場合、つまりペイメントチャネルの相手側への送金の場合は1秒もかからないだろう。手数料については、経験則的に0.1%ほどなので、もし$1USDの送金であれば、0.1セントほどだ。ゼロホップでの送金の場合は、手数料はかからない。スループットに関して、LNDのベンチマークだと50tpsという指標がある(引用元記事)。記事内にも記載があるが最適化することで1,000tpsまでは向上可能としており、仮に2者間での送金が同時に100箇所であるとすれば、理論上1,000,000tpsとなる。

3.ルーティングネットワーク

ビットコインはPoWに対するマイニング報酬がマイナーのインセンティブとして働くように、ライトニングネットワークには送金の中継に対するルーティング手数料が参加者へのインセンティブとして働いている。L1におけるマイニング競争はビットコインのセキュリティを高める一方、L2におけるルーティング競争は、送金の安定性と耐障害性に貢献している。

ルーティングノードは、送金の中継をするたびに、手数料を得ることができるので、なるべく多くの中継をしたい。しかし、中継しようとしても下流のチャネルのアウトバウンドキャパシティが足りない場合、中継が失敗する。そこでルーティングノードはチャネルのバランスを保とうとする(バランス保持のために手数料の調整やリバランスという手法がある)。これがルーティング競争による送金の安定性に繋がるのである。また、ルーティングノードが増えることで、送金網がより密となり耐障害性を高めることになる。

まとめ

ビットコインをL1に据えたL2技術であるライトニングネットワークは、参加者が各自ペイメントチャネルを形成することで高い分散性と検閲耐性を実現する。また、L1におけるマイニング競争に対して、L2ではルーティング競争が送金ネットワークの安定化と耐障害性を図っている。10年前サトシナカモトによって考案された第三者機関に依存しない送金がビットコインであり、その本質を受け継ぎながらスケーリング問題への解決をしようとしているのがライトニングネットワークなのである。

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