すごい酒屋さんのお話

すごい酒屋さんのお話

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今から15年以上前ですが、お酒に詳しい知り合いから誘われて、ある酒屋さんへ行った事があります。その頃は、まだお酒の事を何も知らなかったので、私はただついて行っただけなのですが、その時の出来事が印象的だったので、今でも記憶に残っています。今回は、そんな印象的な酒屋さんでの出来事について書いてみようと思います。

                                  

その酒屋さんは愛知県の某所にあります。お店に行く前に知り合いからは「ちょっと普通の酒屋さんとは違うよ。」とだけ言われていたので、私は何が他の酒屋さんと違うのかが気になっていました。そんな事をあれこれと考えているうちに、私たちはお店に着きました。

                                  

お店は見つけやすい路面店で、ショーウインドウには様々なお酒が陳列されていたのを覚えています。見た目はいたって普通の酒屋さんでした。そして中に入ると、店主の方が出てきて知り合いと何やらお酒の話をし始めました。私には、お酒の話はちんぷんかんぷんだったので、適当に店内をぐるぐるしながら、何か普通と違う部分はないかと探し始めました。

                                  

店内には、所狭しと様々なお酒が並べられていました。日本酒や焼酎、ワインやウイスキーなど品揃えは豊富で、もしかしたらこれが他の酒屋さんと違う所なのかなあと考えていました。

                                  

さて、しばらくすると1人のお客さんが来店しました。そのお客さんは最初から目当てのお酒があったらしく、入店するとすぐに「〇〇の焼酎を下さい。」と店主の方に言いました。すると、店主の方はそのお客さんを一通り観察した後に、こう言いました。

                                  

「ないよ。」

                                  

(あ、置いてないお酒だったんだ。)と思っていると、そのお客さんは指を差しながら、「この焼酎ですよ。」と言いました。何気なく指差した方を見てみると、確かにそのお客さんが欲しがっているお酒と同じものが陳列されていました。

                                  

(これだけ品数が多いと、置いてある商品を忘れる事もあるんだな~。)と思っていると、今度は店主の方が、「それは売り物じゃないよ。」ときっぱり言いました。確か、結構な本数が陳列されていたと思います。私は、人気の商品で全て予約完売してしまったのかなと思いました。そのお客さんはよっぽどそのお酒が欲しかったのか、しばらく店主との間で押し問答を繰り広げていましたが、ついには諦めて帰って行きました。

                                  

さて、帰りの道中で私はさっきの出来事について知り合いに聞きました。すると知り合いは、「あの陳列されてた焼酎は全部売り物だよ。」と言いました。「え、どういう事?」と聞くと、どうやら店主の方に気に入られなかったから売ってもらえなかったとの事でした(笑)。目の前に商品があるのに売ってもらえない事なんてあるの!?と私は驚きました。

                                  

その後よくよく話を聞くと、店主の方が決していじわるをしている訳ではない事がわかりました。あの時売っていた焼酎は、とても希少価値の高いレアなものだったらしいのです。ちょうど2000年代前半は焼酎ブームの頃で、様々な人が焼酎を買い求めた時期でした。そんな中で、焼酎をよく知らなくてもレアと言うだけで買い求める人もいたようです。

                                  

しかし、あの店主の方はちゃんとお酒を理解している人にこそ飲んで欲しいと言う考えを持っていたそうです。その為、レアなお酒に関しては、買い求める人のお酒に対する理解や思いを観察してから売るかどうかを判断しているとの事でした。

                                  

この話を聞いた時、私は色々と考えさせられました。確かに、蔵元さんが手間暇をかけて造った貴重なお酒に関しては、その本質がわかる人にこそ飲んで欲しいと言う思いがきっとあると思います。そしてこの店主の方も、お酒に対して真摯に向き合っているからこそ、その価値がわかる人にこそ飲んで欲しいと思っているのです。

                                  

しかし、それと同時に根底にはビジネスがあるので、お酒をわからない人でも売れるなら売りたいのも事実なはずです。私が酒屋さんだったらどうするだろうか、お金になるならやっぱり売っちゃうのかな~(笑)。みなさんは、どう思われますか?今回は、そんなお酒に対して真摯に向き合うすごい酒屋さんのお話でした。

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