日本社会における信用創造の無用化/私有財産制度の非合理化について|より代替的な国家/貨幣(共同幻想)制度の検討

日本社会における信用創造の無用化/私有財産制度の非合理化について|より代替的な国家/貨幣(共同幻想)制度の検討

森永康平×井上智洋による日本経済に関するイベントがゲンロンカフェにて行われていたので、最近の政治経済などを勉強しに参加してきました。✌️

井上さんによる貨幣成長率と実質経済成長率の相関、日本のマネーストックとポリシーミックスなどに関する議論を森永さんがビジネス的な観点からわかりやすく解きほぐして解説してくれたので、とても面白かったです。

日本社会における若者層のイデオロギー、政治の世界、人口動態、異次元緩和と財政出動、デフレマインド、欧米追随型、緊縮財政論、増税、インフレ率の向上圧力、社会資本老朽化、積極財政とイノベーション創出、森永卓郎と関西のお笑いなど、複雑怪奇な要因が絡まり合って経済成長できない要因分析について、より興味関心が湧く内容となっています。

https://www.youtube.com/watch?v=LOhlmTnqZMo

今回は、井上さんの共同著作である「資本主義から脱却せよ~貨幣を人びとの手に取り戻す~」なども参考に「日本社会と信用創造の無用化/私有財産制度の非合理化」について考察していきたいと思います。また、「より代替的な国家/貨幣(共同幻想)制度」についても1つの可能性として調査を行いました。

・貨幣成長率と実質経済成長率の相関

https://twitter.com/tomo_monga/status/1652218307070803968

・日本のマネーストック

https://twitter.com/tomo_monga/status/1652568429176705030

■サマリー

・政府による直接的な公共投資、デフレ不況下における企業への補助金/国民への給付金付与による、消費需要の拡大/アニマルスピリッツを喚起する(景気拡大には付与停止によって需要/インフレを抑制)取り組みなどが信用創造批判派領域を中心に議論されている。※貨幣の大量発行による中央銀行の信用力低下(共同幻想の崩壊)にともなうハイパーインフレ等の議論についてはまた別途調査を行う。

・日本社会においては、1990年代から設備投資の必要性が薄れ、バブル期の不動産投資など銀行による投機のための信用創造/貸付が行われ、北海道拓殖銀行、山一證券の連続破綻など、金融危機発生と金融再編の時代を経て、現在においては「銀行による信用創造の無用化/私有財産制度の非合理化」に準じた経済/社会システムのあり方が必要と仮定する。

・デフレ期における金融緩和 +財政出動による経済の活性化は企業活動/イノベーションの創出を促進する効果があるとされ、それによる賃金上昇や国民生活の充足化は当初2010年代に期待されていたことであったが、実際に国民にお金が行き渡らないまま国民生活の貧困化にともなう治安の悪化/国際競争力の低下などの課題が日本社会では深刻化しており、「銀行による信用創造の無用化/私有財産制度の非合理化」といった構造的な課題の解決策として、より代替的な手段を検討する。

・CVCなど銀行や企業によるスタートアップ企業の支援システムの構築をはじめとして、日本社会においてはVCによるリスクマネーの供給/アニマルスピリッツの喚起を促進する仕組みの構築が進んでおり、より広義に銀行による信用創造(や既存政府による公共投資)の代替として機能する取り組みであるとも検討される。

・1980年代には「最も成功した社会主義国」とも評され、2000年代からは新自由主義のもと広義に自国通貨価値/国際競争力を低下させてきた日本社会における国家/貨幣システムの再構築、法定通貨建価値の担保(軍事力/地政学的リスクを考慮した海外への金銭的支援)が、どのようにして行われていくのかなど、より幅のある議論も2023年現在においては重要であると考える。

・2010年代の日本社会におけるケインズ的な財政・金融政策が景気回復はもたらしたものの経済成長はもたらさなかったことや日本社会における政府から民間企業への不透明な資金供給/中抜き文化といった日本式システムなど、多くの課題が日本社会には存在している。

・米国におけるヘリマネ後の消費需要/インフレ抑制の失敗及び金融危機発生と金融再編の時代への突入したことをはじめとして、複合的な要因が絡み合うインフレ時における国際情勢の混乱とともに「不平等が制度化した社会構造の中で暴力的衝撃などの平等化装置」が機能しつつあると仮定する。(参照:暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病)

・戦争・革命・崩壊・疫病によって、社会が平等化した事例として、敗戦によって財閥が解体され、会社主義に代表されるように「最も成功した社会主義国」とも評されてきた昭和/平成期の日本が挙げられ、将来的な戦争・崩壊を要因とした国家/貨幣の再構築化後の「信用創造の再有用化/私有財産制度の再合理化」など、国家のサイクルに合わせた考察も中長期的には必要だと考える。

※プロトコルによる国家(The Network State: How To Start a New Country)など、より代替的な共同幻想の国家化/貨幣化についても注目したい。その点において、貨幣の本質的な役割を金融(DeFi)が低手数料をもとに流動性向上といった形で担うなど、2020年ごろから小規模な社会実験の範囲で、さまざまな事例が創出されている。

・2010年代から現在において、価値の保存手段から価値の交換手段(財の貨幣への進化)としてその役割を変化させてきたBitcoinは、政治と貨幣経済が密接に関わることによる不条理の解消など、より公平的で文明的な社会構造への再構築/再回帰といったように「より代替的な共同幻想の国家化/貨幣化」を主題にした場合において、有用性の高い示唆をもたらしている。

・「より代替的な共同幻想の国家化/貨幣化」といった考察/解釈の範囲において、グローバルな非法定通貨建貨幣ネットワークの構築、より公平的で文明的な社会構造への再構築/再回帰、複数の基軸通貨が多層的な貨幣経済を構築する時代への対応等を担う上では、「ハードマネー(健全な貨幣)」の要件をクリアする必要があり、オープンかつ検閲耐性の高い自己管理可能な価値の交換手段の存在が重要であると考える。

・海上国家の建設、富裕層のニュージーランドへの移住など部分的にリバタリアニズムなどのイデオロギーと強く結びつく形で、既存の国家/社会システムからの「Exit」(=より代替的な国家)を目指す取り組みが確認されている。より広義にはグローバリズムによって解体された社会システム(公共性)をよりボトムアップなアプローチによって、再構築しようとする取り組み(自治体主義/目の行き届く民主主義)をも内包した論点も必要であると考える。

・水上コミュニティ(ナイジェリア/ラゴス)など、ほとんどの場合において従来型の国家的機能、貨幣制度、デジタル技術を活用せずとも物々交換や贈与経済によって成立している原始的なエコシステムも2023年現在においては多種多様な要因と貧困化といった課題を有しながら成立している。(詳細については要調査必須)プロトコルによる国家や既存の国家/社会システムからの「Exit」などの「国家/社会の構成単位/サイズの見直し」といった観点においては、より原始的な構造を前提にコミュニティ/集落の国家化、財の貨幣化プロセスを考察していきたい。

・クリプト領域においては、デジタル公共財といった観点から「パーミッションレス = 排除できない/部分的に排除可(運営によるコントラクト停止 etc...)」といった特徴を有しており、社会的共通資本(広義に社会インフラ)として機能する可能性など議論/実践が行われている。また、不変のコードによって定義され強制される世界ルール/社会的合意メカニズム設計によって成立する民主主義/国家を志向する「Autonomous World(自律的世界)」などの事例があり、仲介者が介在しない公平的で文明的な社会構造への再構築/再回帰といった観点において、重要な示唆をもたらしている。

・また、2000年代の「サイバースペース + 資本主義 = IT(後のGAFAMへと発展)」の延長線上において、主にシリコンバレーのVCによるリスクマネーの供給/アニマルスピリッツの喚起の対象として「法定通貨建価値の代替的な獲得/交換ビジネス」が展開されている。デジタルなコミュニティによる共同幻想の投機的価値化(ミームコイン etc…)は、ある意味で法定通貨自体の価値そのものが共同幻想によって成立しており、暗号資産による「法定通貨建価値の代替的な獲得/交換ビジネス」が、戦争・革命・崩壊・疫病といった暴力的衝撃などの平等化装置を起点とした「より代替的な共同幻想の国家化/貨幣化」のプロセスにどのように関連していくのかなど、より多角的な考察が可能であると考える。

・すでに1930年代に、戦争・革命・崩壊・疫病といった暴力的衝撃などの平等化装置が起動され、覇権国家/基軸通貨化のプロセスが進行してきた歴史(第二次世界大戦 ポンド/英国→米ドル/米国)があり、2030年代において、そのプロセスがどのような有用であるのかなど「より代替的な」共同幻想の国家化/貨幣化のプロセスを考察する上でも参考にしていきたい。

といった観点を踏まえて、

・暗号資産による「法定通貨建価値の代替的な獲得/交換ビジネス」

・銀行による信用創造(や既存政府による公共投資)/私有財産制度の代替

・より原始的な構造を前提にしたコミュニティ/集落の国家化、財の貨幣化プロセス

・グローバルな非法定通貨建貨幣ネットワークの構築

・不平等が制度化した社会構造の中で暴力的衝撃などの平等化装置の代替

・仲介者が介在しない公平的で文明的な社会構造への再構築/再回帰

について、より実践的にクリプト領域で取り組みを進めていきたいです。👍

■参考文献

森永康平×井上智洋 聞き手=落合龍雅「日本経済が衰退した本当の理由──日銀の植田新体制からAIブーム再燃まで激論!」【夜の井上ゼミ #2】

https://www.youtube.com/watch?v=LOhlmTnqZMo

資本主義から脱却せよ~貨幣を人びとの手に取り戻す~

https://honto.jp/netstore/pd-book_30865891.html

第4回 イノベーション・エコシステム専門調査会

https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/innovation_ecosystem/4kai/siryo2-4.pdf

FIRST CVC 日本最大のCVCコミュニティ

https://www.firstcvc.jp/

地方圏で高まった公共投資への依存

https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr01/chiikireport01_01-01-01.html

結局「日本型システム」が世界の答えになる~共産主義も、資本主義も、制度疲労の中で/世界で最も成功した「社会主義国家」

https://gendai.media/articles/-/106315?page=5

暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病

https://honto.jp/netstore/pd-book_29649105.html

The Network State: How To Start a New Country

https://thenetworkstate.com/

ビットコインを交換手段に進化させるライトニングネットワーク

https://lostinbitcoin.jp/bitcoin/a_look_at_the_lightning_network_all/

BITCOIN SONGSHEET: HOW FIAT MONEY RUINS CIVILIZATION

https://bitcoinmagazine.com/culture/fiat-money-ruins-civilization

Futurismと21世紀のイデオロギー【民主主義のアップデート?】〜加速主義も含む、しかしそれだけではないFuturism〜 発表資料

https://spotlight.soy/detail?article_id=ff5u85jcu

ナイジェリア水上スラム「マココ」が映し出す光と影

https://www.fsight.jp/articles/-/49374

自主世界/guiltygyoza

https://www.guiltygyoza.xyz/2022/12/why-aw

貨幣の歴史と国民国家/資本主義の再構築について

https://spotlight.soy/detail?article_id=egby4k400

Remaining : 0 characters / 0 images
100

Sign up / Continue after login

Related stories

Writer

Japan

Share

Popular stories

Slash Web3 Payments導入店舗一覧|暗号資産決済のSlash

383

Account Abstraction輪読会/ETHIndia報告会まとめ👍

126

貨幣の歴史と国民国家/資本主義の再構築について

111