ビットコインの普及、インフレ率268万%でUSドルが買えないベネズエラで見えた可能性
はじめまして!Token Labという有料クリプト情報サイトでリサーチャーをやってるDa-です。
私は仕事がら、北米と南米に出張に行く事が多いので、現地で調べてきた色々なクリプト事情をシリーズで書いていこうと思います。
前回は「5月25日にデフォルトしたアルゼンチン。通貨下落する中でBTCが使われるか現地調査した」という記事を書きました。
今回はその比較として、もっと状況が悪いベネズエラをアルゼンチンと比較したいと思います。
皆さんはベネズエラという国を知っていますか?産油国として有名です。私は残念ながら行った事はないのですが、仕事で関係したことはあります。
またベネズエラでもう一つ有名な点は異常なインフレ率です。2019年1月には、なんと268万%のインフレ率となっています。
このベネズエラでBTCが普及するのかをアルゼンチンと比較します。
またベネズエラは一時期話題になったペトロという国が発行した暗号通貨もあり、その状況もBTCへ影響しているのでそこも紹介しますね。
1.BTC購入額のアルゼンチンとの比較
まず、ベネズエラの通貨のボリバルでのチャートを見てみましょう。これを見るとボリバルでの購入量は右肩上がりですが、インフレ率が激しく通貨の価値が下がっているのでこれは当然です。
こちらはBTCベースでのグラフです。こちらは2019年2月にピークを付けてからは横ばいです。
ただアルゼンチンでのBTC購入数と比較すると、平均10倍以上もベネズエラの購入数が多いです。左の縦軸を見てもらうと桁の違いが分かります。
ちなみにGDPで見ると、ベネズエラとアルゼンチンは年間5,000億ドル程度でほぼ同じです。にもかかわらずベネズエラでは10倍以上もBTCが買われています。その理由はなぜでしょうか?
一つ考えられるのは、ベネズエラでは本当にUSドルが手に入らなかったからという事が考えられます。ベネズエラでは闇両替もありますが、公定レートの20倍程度もレートが悪いです。この場合に資金の逃げ場がなく、BTCに流れたと仮定ができます。
2.ダッシュの普及
もう一つベネズエラの特徴的な点としてダッシュの普及があります。
1年半前の記事で申し訳ないですが、ダイヤモンド社のこちらの記事がおもしろいです。
この記事によると、ベネズエラではアルゼンチンでなされなかった暗号通貨の日常利用が行われています。理由はベネズエラ内では現金が闇レートでしか手に入らず、サンドイッチ一つが2万円もするそうです。クレジットカードも闇レート基準なので使えません。しかしダッシュだと通常レート決済ができ、実質クレジットカードの20分の1で決済ができるとの事です。
3.国発行の暗号通貨と、それによるBTCへの課税
ベネズエラのもう一つ特徴的な点として、国が発行する暗号通貨のペトロがあります。これはベネズエラの持つ石油や金を担保として国が発行する暗号通貨です。日本でも一時期話題になりました。
最近でもコロナウィルス関係の支援のために、国が医師へ1ペトロ(50ドル程度)をエアドロップすると息巻いています。
しかし担保にされた油田をロイター社が調査したところその油田は見つからず、ペトロ関係の事務所も住所に存在しないなど、裏付けがない資産として批判されています。
また国がペトロを普及させるために、ペトロ以外の暗号通貨に16%のVAT(日本でいう消費税)を課税するなどしています。
しかしペトロによる影響にもかかわらず、ベネズエラではアルゼンチンの10倍という大きなBTC取引量があります。
4.まとめ
通貨危機が起きている国でBTCが普及するかを調べるため、アルゼンチンとベネズエラという二つの国を比較しました。
その結果、闇両替でもレートが20倍になり本当にUSドルが手に入らないベネズエラでは、アルゼンチンの10倍以上の取引がある事が確認できました。また、アルゼンチンでは見られなかった日常決済での利用もありました。
新興国でも経済の程度が極端に悪い国では、暗号通貨のSoV(Store of Value:価値保存)や日常決済が見られてくるのかもしれません。
ちなみにToken Labに行くとより詳細なデータを出してリサーチしてるのでぜひ見てください。無料期間が1週間あるので、お気軽に見てみてくださいね。