OP_CAT😺も不要!?ESDSA署名の長さを署名するランポート署名の提案

ビットコインの署名方式にはESDSA署名とSchnorr署名の二種類があり、pre-Taprootでは前者を、post-Taprootでは後者の方式を使いトランザクションを署名します。Schnorr署名はソフトフォークによって新たにビットコインコンセンサスに追加された新しい署名です。これらの署名にはそれぞれの特徴があり、Schnorr署名は署名の加算やバッチ検証ができます。ただし、どちらの署名も量子耐性を持っていません。

ランポート署名は量子耐性のある署名で、これまでもビットコイン界隈ではその活用方法が議論されてきました。しかし、ランポート署名を有効にするには、新しいOPコードの追加など、ソフトフォークが必要だと考えられていました。

今月Bitcoin-Devメーリングリストに、ソフトフォークなしでもランポート署名を使えるようにする提案がされました。

ランポート署名は、まず2k個のペアのランダム値を秘密鍵、そのハッシュ値を公開鍵として生成します。署名は、kビットのメッセージに対して、そのビットに対応する秘密鍵を選択します。検証は、公開鍵、メッセージ、署名を使い、署名(実際は秘密鍵)をハッシュしてメッセージのビット列に対応する公開鍵と等しいかを検証します。

今回提案されたランポート署名は、ESDSA署名の長さをランポート署名します。ESDSA署名の長さは可変で(変化する確率は1/256とかなり小さい)、OP_SIZEでこの値を取得します。この値が可変なのでOP_IFで条件分岐させるることができ、その分岐ごとにランポート署名の検証をさせます。以下はメーリスで提案された擬似コードの一部抜粋です。

PUSH ecdsaPubkey0
OP_CHECKSIG (ecdsaSig0)
// Verify lamport signature on ecdsaSig0
PUSH x00, x01
if OP_SIZE (ecdsaSig0) == 59:
  if OP_HASH(y00) != x00: OP_RETURN
else if OP_SIZE (ecdsaSig0) < 59:
  if OP_HASH(y01) != x01: OP_RETURN

正当なユーザーはランポート署名に使ったペアのどちらか一方の秘密鍵を公開するだけで済みます。上記の例で、ecdsaSig0のサイズが58バイトであれば、y01の秘密鍵を公開します。

一方、量子コンピュータのある世界で攻撃者はESDSA署名を偽造できたとしても、その長さが59バイトであれば、y00を公開しなければならず、この値は未知です。そのため、攻撃者は既知のy01を使うためにESDSA署名の長さを58バイトにする必要があり、署名サイズを調整(具体的にはTXハッシュを調整)するのに余分な計算量が必要となります。

ECDSA署名の長さが変化する確率が小さいので、膨大な署名を作る必要があり、実用的でないとされていますが、このトリックを使うことでコベナンツの導入を妨げているのはサイズ制限だけとされています。

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