QerkoがAirレジより使いやすく、ライトニング決済にも対応していたチェコ訪問記

QerkoがAirレジより使いやすく、ライトニング決済にも対応していたチェコ訪問記

最近、日本の飲食店の多くでは卓上のQRコードを読むことでメニューが開き、そのままモバイルデバイスから注文できる「LINEモバイルオーダー」や「リクルートAirレジ」といったセルフ注文システムが採用されています。

中には、そのままセルフで決済までできる店舗も多少はありますが、大半は決済自体は店員を呼んで、あるいはレジまで移動して行う形態のように思います。食い逃げを想定した性悪説運用なのでしょうか。(システム側はセルフ決済に対応しているので、店舗側が使えないよう設定している)

今回、Trezorの新製品発表イベントに招かれて訪れたチェコにおいても、Qerko(クエルコ)というセルフ決済サービスに対応している店舗がところどころありました。(プラハの会社のようです)

https://www.qerko.com/eng/home

このQerkoがかなり使いやすかった上に、ライトニング決済にも対応していて感動したので、今回はQerkoの優れているところを紹介します。また、ビットコインを決済に使うことに関して自分のお気持ち表明をさせてもらいます。

単純にセルフ決済システムとしてよくできている

Qerkoの使い方はシンプルです。(動画も本記事の最後に埋め込んでます)

まず、テーブルで通常のように注文します。(QRコードを読み込んで、そこのメニューから注文することができる店舗もあるようですが、自分が行った店舗では注文は店員に申し付ける方式でした)

食べ終わって会計時、通常なら店員を呼んでテーブル会計することになりますが、Qerkoを使う場合は特に店員を呼ぶ必要もなく、勝手に卓上のQRコードをスキャンするかスマホをタッチします。すると、Qerkoのアプリが開きます(アプリを入れておく必要はあります。)

(Hoxton Burgers Pragueのテーブルの隅にあったQerkoのQR)

すると、注文した商品の一覧が現れるので、「自分が決済したい商品だけ」選んで決済に進みます。そう、商品単位での割り勘に対応しているのです。ここはAirレジなどよりも圧倒的に使いやすいと感じました。チェコはチップのある国なのでチップも選びます。(Qerkoでは平均8%、Qerko以外では平均5.7%くらいだそうで、導入効果の1つに挙げられてました)

Qerkoは多数の決済手段に対応していますが、デフォルトで入っているのはGoogle Pay/Apple PayとBitcoinの2種類だけ。今回は右下のドロップダウンからBitcoinを選んでいます。もちろんスマホにライトニングウォレットがインストールされている必要があります。

Payをスライドするとsats建ての金額が表示されるので、Use External Walletから支払いに使いたいウォレットを選んで開きます(それ以外にもQerkoにチャージして使うこともできると思われます)。あとは通常のライトニング決済です。決済が完了したらQerkoのアプリに戻って支払いが完了したことを見届けましょう。

あとはもう勝手に退店してOKです!ちょっと気まずいのであいさつしてから出るようにしてましたが、毎回店員はすでに支払いが完了していることをPOS端末の通知で把握済みでした。

ちなみに支払先ノードはConfirmo Bです。Confirmoという仮想通貨決済サービスのノードのようです。

例えBTCMapに載っていなかったとしても、Qerkoの決済サービスを導入している店舗であればライトニング決済が可能という、非常にうれしい状況でした。5日間の滞在中に5か所でライトニング決済で食事することができました。

しかもQerko自体にスタンプカードシステムが組み込まれています。店舗側はいろいろできてうれしいですね。

対応店舗数、ユーザー数etc.

Qerkoは導入店舗数を明らかにしていませんが、ある程度推定することはできます。

まず、Qerkoのアプリ内にQerko gastro mapという地図があり、そこには1500店舗以上が登録されています。ただ、自分が確認したところ、この地図に載っているからといって必ずしもQerkoのQRコードが卓上にあるとは限らず、この機能とQerkoの決済機能は1対1対応ではないようです。体感としては決済まで導入しているのは地図上の半分くらい、1000件弱なんじゃないでしょうか。

また、Qerkoは自身のウェブサイトでユーザー数が150万人いると主張しています。そこから直接対応店舗数を推定するのは少し難しいですが、わざわざアプリをインストールしないと使えない決済サービスだと考えるとある程度普及しているといえるでしょう。

Qerkoはチェコ国外でも採用例がありますが、比較対象としてチェコの人口は1088万人です。

Qerkoに対応していればライトニング決済ができるのは非常に心強いです。ちなみに、プラハはルガーノ市を除けばヨーロッパで一番ビットコイン決済が普及しています。

ビットコイン決済は流行らない?

ビットコインはデジタルゴールドという文脈が普及しすぎた結果、「ビットコインは決済には使われない・使いたくない」という意見がかなり一般的になったように感じますが、個人的にはこの意見に異を唱えたい理由がいくつかあります:

ビットコイン決済はネットワークの拡大によってビットコインの価値上昇につながる

私はビットコイン決済を通してビットコインが身近になれば、保有する人が増え、価値が上昇すると考えています。スケールの大きな例えでいえば、1万BTCでピザ2枚を買ったラズロ氏の話が有名ですが、彼らが世界初のビットコイン決済をしたことによってビットコインの普及が大きく進んだのは間違いないでしょう。これを「あのときの1万BTCを今も持っていれば」という風に捉えるのは生存バイアスかもしれません。

より身近にも、より小さいスケールかもしれませんが、似たような構造があると思います。私も過去に0.1BTCでノートパソコンを買った2か月後に価格が3倍になって短期的に後悔したことがありますが、今思うとあのときの0.1BTCが10人の0.01BTCになってビットコインの価値を広げているかもしれません。(そして当時は本当に新しいPCが必要だったし、PCに投資したことで今日の自分があります!)

これを前提とすると「ビットコイン決済はいいことだが、自分以外の人たちがやってほしい」あるいは「ビットコイン決済はいいことだけど、無駄遣いはよくない」が合理的な意見になると思います。そしてもし使って減るのが嫌なら、また買えばいいんです。

ついでに言うと、ビットコイン決済は使われなければ廃れる(会社がつぶれる、導入が取りやめられる)ので、むしろ積極的に使ってほしいです。

まとめると、ビットコイン決済はビットコイン保有を増やす、つまりビットコイン価格上昇の味方でもあります。歴史の一部にもなれます。いいことづくしです。

「悪貨は良貨を駆逐する」は誤り

グレシャムの法則と呼ばれる上記の表現ですが、これを根拠に「ビットコインは法定通貨より『良貨』だから貯めこまれる」という意見もよく目にしますが、これはグレシャムの法則の誤用だと考えています。

そもそもグレシャムの法則とは「同一通貨・同一額面内において質的な差」がある状況を想定しています。(例えば500円金貨と500円ニッケル貨があるような状況です。)この状況下では、特に強制通用力がある場面において「相手に悪貨を押し付ける」ことが可能です。逆にもし強制通用力がなければ、売り手が悪貨を受け付ける合理性はありません。(当たり前に良貨を要求するでしょう)

確かに「悪貨」とされがちな法定通貨にはこの強制通用力がありますが、強制通用力もいろんな方法で迂回できてしまいます。例えば商品をすべて2倍に値上げして、「良貨」(ビットコイン)で支払う場合は50%オフにする、などです。ビットコインの強みはいかなる政府にも完全に封じることができない強靭さなので、どのような状況でも「法定通貨より有利な条件で流通させる」ことが可能になります。

実際、ハイパーインフレが起こってしまった国では悪貨が良貨を駆逐していますか?アルゼンチンなどでは家や車の購入にはアルゼンチンペソではなく米ドルが求められるそうです。それが答えだと思います。

したがって、先述のネットワーク効果によるメリット以外にも、ビットコインが将来的にも使われないというのは想像できません。むしろ、普段から使うことでビットコインを決済に使用できる環境を維持することに意味があるのではないでしょうか。

ビットコインはデジタルゴールドを超越している

デジタルゴールドという文脈の一番勿体ない部分は、ビットコインはゴールドは持たない優れた性質をたくさん持ち合わせていることです。例えば以下です:

・少額でも高額でも、好きなだけ分割、結合して支払いに使える

・非対面の支払いに使える

受け取ったものが偽物ではないと非常に安価に検証できる

・国境を越え、世界中に持っていける

逆に金は物質的な存在というものを持っていますが、そのトレードオフとして上記ができません。ビットコインの可能性の上限が「金」だと決めつけるのは愚かに感じませんか?

おわりに

11月10日からアメリカではSquareの決済端末がライトニング決済に正式に対応するようで、店舗側は決済金額の0~50%までを売らずにビットコインのまま保有するように設定することもできるそうです。アメリカの話ではありますが、こういうビットコイン決済の機会はまさにビットコイン価格にとってもプラスだと思うので、ビットコインを投資としてみている人こそビットコイン決済のメリットを見直し、ぜひ使っていただけると嬉しいです。

Qerko実演動画(Zeusのバグで途中時間がかかってますが、Zeusの問題です)

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記事を書いた人

ビットコインが好きです。ビットコイン研究所に寄稿したり、トラストレスサービス株式会社という会社で実験的なサービス開発をしています。

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