週刊暗号資産決済ニュース【2022年10月第2週】
先週は、米住宅市場冷え込みや訪日規制の緩和を要因に円安ドル高についても傾向が少し弱まるのではといった予想もありました。しかし、13日の消費者物価(CPI)発表をきっかけに、円相場は、1ドル=148円台に下落し、32年ぶりの更新。
・9月のCPI総合、コアともに予想を上回る
・11月の0.75%利上げが決定的(3会合連続)
・7月の米国雇用統計 失業率 3.5%(前月より改善)
上記の中でも特に米国雇用統計における失業率上昇がインフレの改善に効果的であるとされています。また、Consumer Price Index for All Urban Consumers(すべての都市消費者の消費者物価指数)を個別具体的に見ていくと各項目ごとに傾向が異なるので、インフレの全体的なピークアウトがいつになるのか気になるところです。
https://www.bls.gov/news.release/cpi.t01.htm
各国の中央銀行が、ドル独歩高への対応に迫られていますが、利上げによる景気減速期に向けた取り組みも必要と言えます。また、暗号資産市場では、Mango Marketsにおける1億1,700万ドル規模のエクスプロイトが大きな話題となりましたが、ハッカーが4,700万ドルをバグバウンティとして保有し、残りは返還されることとなりました。国家や通貨の不安定化とともにCryptoコミュニティ/暗号資産が代替手段として広く普及することも想定されますが、より安定的に人々が金融サービスとして利用できる体制の構築も必要であると言えます。
では、先週の暗号資産決済ニュースを振り返っていきましょう!
✅Bitcoin/LightningNetwork
・エルサルバドルにおいては、CoinCornerがLightningNetworkのタッチ決済の提供を開始することが発表されました。Volt cardは個人的にも注目しており、日本のSuica決済のように一般の人々にもわかりやすいので、NFCによるLightningNetworkのさらなる普及が期待されます。
・アフリカでは引き続き、Machankuraの普及が進んでいます。フューチャーフォンでLightningNetwork決済ができるためアフリカにおいて銀行口座が持てない人々の金融サービスとしての役割を果たしています。
・River.comは、Lightning Network の入出金をサポートするAPIゲートウェイ「River Lightning Services (RLS)」の提供を開始。RLSは、企業がLightning Networkの導入をより効率化し、さらなるユースケースの創出を促進させることでしょう。
・日本では、もなみ屋がDiamond Hands の開発者リポジトリ ( https://github.com/diamondhands-dev ) に、参画することを発表。RGBプロトコルを活用して、ビットコインネットワーク上でスマートコントラクトを実現することを目指しており、新しいエコシステムの構築に注目です。
✅大手企業 × 暗号資産決済
・GoogleとCoinbaseが提携し、ユーザーが暗号資産でクラウドサービス料金を支払うことができることを発表。Google Cloud Servicesは、Near ProtocolやBNB Chainとも連携しており、Cryptoエコシステムと積極的な統合を進めています。
・Visaは、B2B ConnectネットワークをJPMorganのLiinkに統合し、ブロックチェーンベースの国際決済の実現にむけた取り組みをスタートしました。この取り組みは、SWIFTの代替となることも見据えており、GoogleやVisaによって暗号資産決済市場のさらなる拡大が期待されます。
✅各国における市場形成
・ウクライナとの戦争を要因にSWIFTから除外されたことで、ロシアにおいては、国際送金や資産価値保全を目的にステーブルコインの取引量が増加していることをChainalysisは明らかにしています。暗号資産決済はウォレットさえあれば、誰でも利用できるのがメリットであり、有事においては法定通貨の代替手段として1つの役割を果たしています。
・ブラジルのリオデジャネイロにおいては、2023年から固定資産税を暗号資産で支払うことができる法令が発行されました。現在は、ブラジル証券取引委員会 (SEC) の要件を遵守し、暗号資産から法定通貨に交換してする役割を担う暗号資産決済のサービス事業者を募集しています。
・ドミニカ政府は、Tronとの提携を発表し、ドミニカコイン (DMC) を発行。ドミニカコインは、ファントークンの仕組みを採用し、ドミニカの自然遺産と観光名所への世界的な関心を高めるのに役立つとされています。
✅CBDC
・シンガポール金融庁は、SWIFTが主催した「Sibos 2022」において、国際決済における暗号資産決済の有用性を紹介。また、settlementの問題の解決に向けてコルレス銀行を仲介しないCBDCの共通PFの重要性についても主張を展開しました。
・国際通貨基金(IMF)の年次総会において、ジャネット・イエレン米国財務長官は、米国におけるCBDCの実現について、下記のように述べています。
“We can continue to think about whether it’s right to implement,”
“in a position where we could issue one.”
(私たちは、CBDCを発行することが正しいかどうかについて、引き続き考えることができる。それを発行できる立場にある。)
すでに米ドルペッグのステーブルコインは広く流通し、米ドルへのアクセスが効率的に行えることで金融包摂的な観点でも途上国を中心に大きなニーズが存在しています。石油兌換紙幣(ペトロダラー)としての米ドルの役割は縮小していますが、Crypto領域を介して世界中の人々が利用するデジタル通貨(ステーブルコイン)となりつつあり、CBDC発行が与える影響について慎重な検証が進むことでしょう。
・中国のデジタル人民元については、取引高が2021年7–12月の154%の増加率と比較して、2022 年は14%の増加にとどまっていることが明らかになりました。北京、上海、深圳など23の都市でデジタル人民元は利用が可能であり、世界に先駆けた取り組みであると言えますが、今後どのように展開されていくのか注目していきましょう。
まとめ
先週も各市場において様々な暗号資産決済に関する取り組みが確認されました。
実際に日常的に暗号資産決済ができる環境が整備されることで、市場規模も拡大していくことでしょう。
世界においてこれまで不便だった決済方法が、暗号資産決済によって、より効率的になるといったシンプルなベネフィットを提示していることからCryptoコミュニティのみならず、小売、EC市場との連携が今後も期待されますね。