『ビットコインなんて必要ないと言う幸運なあなたへ』を読んで思うこと① 

『ビットコインなんて必要ないと言う幸運なあなたへ』を読んで思うこと① 

ビットコインの理解には、文系・理系両方の視点が必要です。

文系:哲学・歴史学・経済学からの概念的理解

理系:数学・コンピュータサイエンスからの技術的理解

文系と理系、どちらのドアからビットコインの世界に迷い込んでも、結局は文理融合的理解度が試される時が来ます。

多くの人は「投資的理解」のドアから入ってきます。「投資商品のビットコイン」という視点が理解の邪魔になることは必然ですが、それを乗り越えた先にビットコイナーへの道が続いています。

ビットコイン最終奥義へ至る試練。それを最も確実かつ効率的に乗り越える方法は、「良質な活字媒体の反復作業」と「知識の継続的な出力作業」だと考えます。

では、ビットコイン初心者にとって「良質な活字媒体」とはどんな本でしょうか?例えば『ビットコイン、強気にならずにいられない理由』を挙げましょうか。

題名を見てイマイチ読む気がしないですか?あなたのモチベーションが「儲けたい」ならば、『爆騰!仮想通貨 厳選20銘柄 完全ガイド2024」とかでも別にいいんです。MEGA BIGなコインで一発当てられるようお祈りいたしますが、「ビットコインを真に理解したい」という方は、書籍をしっかり選ぶことをお勧めします。

「知識の継続的な出力」も重要であり、チラシの裏でもネットの片隅でも、得た知識を表現することに意味があります。その次の段階に進める方は、「自分よりビットコインの知識がある人とやり取りする」のが効果的です。間違いを指摘してくれたらラッキー、大いに学べます。

「全く知識のない人へビットコインを啓蒙する」ことは、よりハイレベルな効果があります。が、自分の知識レベルに合わせて行わないと、詐欺師扱い、または本当の詐欺師になってしまいますので、これを上手に楽しめるのは、真のビットコイナーかスキャマーか変態のどれかでしょう。(私は3つ目です)

先週末、『ビットコインなんて必要ないと言う幸運なあなたへ』という新著が出ました。2024年現在において、良質なビットコイン学習媒体の最高峰だと思います。

練木照子さんのビットコイン本邦訳4冊目。前作と比較すると、貨幣の歴史、経済システムの解説に重きを置く『ビットコイン・スタンダード』より、過酷な現実世界とお金の仕組みにまつわる物語を紡いだ『ビットコインの歩き方』に近い印象を持ちます。それもそのはずで、同じ著者Alex Gladstein(『ビットコインの歩き方』は共著)が書いており、構成も似た作品です。

では、前著を読めばスキップしていい本かというと、本作は『ビットコインの歩き方』の圧倒的な上位互換本であり、学びの深さが大きく違います。原著、翻訳ともにクオリティがより高まっており、私は両方読むことを推奨します。

『ビットコインの歩き方』は原題『The Little Bitcoin Book』という名の通り122Pと読了しやすく、後半の20P以上を初心者向けQ&Aに割いており、Bitcoin導入本として最適な作り。

新著は原題が『Check Your Financial Privilege』。直訳で「あなたの経済的特権を確認しよう」に対し、『ビットコインなんて必要ないと言う幸運なあなたへ』という邦題。先進国で暮らす人々が、自分たちの特権的地位を気づていない事実を指弾した刺激的かつ詩的なタイトルです。

先進国におけるビットコインの代表的なパブリックイメージは「投資商品」。数年前だと「犯罪・反社会・詐欺」なども強く、現在も一部残っていますが、アメリカなどを中心に市民権を得つつあります。

先進国内でもグラデーションはあり、テクノロジーに疎い高齢者層には不人気ですし、富裕層にはビットコインで人々がエンパワメントされることに脅威を覚える人が多いと考えます。恐らく、規制リスクは強まるでしょう。

しかし、現在のビットコインは、超大国アメリカでも殲滅不可能な巨大なネットワーク効果を獲得しています。2007−2008世界金融危機において大銀行が救済された際の合言葉

Too Big To Fail(大きすぎて潰せない)

は、皮肉にもビットコインを表現するのに適切な慣用句となりました。

リーマン・ショックから16年後の2024年。「詐欺」と罵られていたビットコインは、世界最大の銀行JPモルガン・チェースの約2倍の時価総額に成長し、最強の金融コングロマリット バークシャー・ハサウェイの市場価値をも上回っています。

ウォール街の太陽王ジェイミー・ダイモン、投資の神様ウォーレン・バフェットは、ビットコインに辛辣な言葉を並べ続けましたが、その批判は市場の支持を得られていません。

先進国におけるビットコインの社会的地位は、「支持者の拡大」と「法定通貨の減価」を両輪に高まっていますが、あくまで「投資商品」に留まっているのが現状です。

「儲けの手段」という存在意義が先行している段階であり、ビットコインの価値の核心に気づくには、先進国の人々の多くが環境的に恵まれすぎていることも重要な背景です。

さて、途上国におけるビットコインはどうでしょう?特に経済破綻国家に住まざるを得ない貧しき民にとって、ビットコインの主たる価値は「投資商品」なのでしょうか。

その答えは、副題『今、世界各地で起きている平和な革命の内幕』にあります。本書はアフリカから物語を始めることで、ビットコインが「無価値な投機の道具」ではなく、「持たざる人々の希望」であることを情熱的筆致で教えてくれます。

長くなったので続きはまた明日。

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