「暗号資産に関連する制度のあり方等の検証」にTOXICパブコメ投下

「暗号資産に関連する制度のあり方等の検証」にTOXICパブコメ投下

税制改正の前段の枠組み変更は着々と進んでいます。大枠はほぼ決まっており、最後はいつもの通り、政治の思惑でエイヤ!と決まるこの流れ。パブコメとはお上が広く一般市民に政策に対する意見や修正提案を求める機会。候補者への白紙委任に近い投票行動よりも、有権者が自身の意見を推敲する機会になるので好きです。

パブコメについて旧知の金融庁OBに再び聞いてみると「コメント数が少なくとも、誤解を招く表現の指摘や、特定の配慮が必要な内容が書かれていれば、修正することは過去に何度もあった。一方的な批判や全面的な反対意見はこれまでの議論の全否定になるので『ご意見ありがとうございました』で済ませるけど。」との弁。どこの国の民主主義も数とカネの論理が優先される現実はあれど、ペンは剣より強しの精神で今回もやってみました。

それでは30ページのディスカッション・ペーパーから引用し、良い内容は褒め、誤解を招く表現は厳しく指摘してみましょう。

◯資産としての位置づけ

・金融庁の報告書に「暗号資産はオルタナティブ投資の対象となり得る」と明記された意義は大きい。従前からの「裏付けがない資産」「投機的資産」「マネロン資産」といった議論から進歩したと言える。ディスカッションの前提として、通貨の歴史や、資産の裏付けとは何かという本質的視点があればなお良い。そこから制度デザインしないと現実から乖離した内容になりやすい。

・金融庁の大先輩、氷見野良三氏(元金融庁長官 現日銀副総裁)が2020年8月25日にブロックチェーン・グローバル・ガバナンス・カンファレンスにて「サトシの夢は今も生きているか?」という講演をしているが、本件を所管する担当職員は内容を把握しているだろうか。法定通貨や金融システムの裏付けたる「国家や中央銀行への信用」がメルトダウン寸前だった2008年、暗号技術の画期的応用により信用すべき第三者を必要としない決済システム「ビットコイン」が産声を上げたのは偶然ではなく必然だったという趣旨の講演である。せめて5年前の氷見野長官の視座を共有できる有識者および政策担当者が参画して進めてほしい。

◯暗号資産の類型分類

・「資金調達の手段としてプロジェクト・イベント・コミュニティに利用されるか否か」を基準に暗号資産を二分類するとのことだが、ビットコイン以外は全て類型①に該当すると考えるが如何か。

・分散性や発行体の有無で評価した場合、類型②としているイーサにはイーサリアム財団という中央集権型の運営主体が存在しており、断続的にイーサを売り捌いているが、「特定の発行者を観念できない」との表現は恣意的かつ誤解を招く表現と考える。そもそも発行者が特定できないとする理由はなにか。

・ミームコイン等には明らかに発行体が存在しているが、流通量が多いとの理由で類型②になるのであれば、明確なダブルスタンダードではないだろうか。

・Web3業界における発行者は、しばしば「DAO」「非中央集権的」と称することで分散性を偽装しているのが現実だ。仮に営利企業が隠蔽的にDAOを作ってコインを発行した場合、類型はどうするのか。偽装的イノベーションの仕手本尊たるコイン発行体が多数存在する現状において、その収益化を認めるような制度改正には反対する。

・現状のDAOの9割9分は、警察庁が指定する「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」と大差ない。こうした偽装組織が資金源に「分散型トークン」を発行した場合でも金融庁がお墨付きを与えることになりかねない。よって、暗号資産の分散性や発行体に関する審査には慎重かつ厳格な運用を求めたい。

・その他の流通量が多いコインでは、XRPにはリップル社という明確な発行主体が存在しており、分散性から程遠いが類型②になる理由は?また、ADAは日本国内で違法性の高い勧誘やセミナーが多数あった事実を認識した上で類型②にするのか?BNBなどの取引所トークンも流通量が多いとの理由で類型②にするのか?もはや、PayPayや楽天ポイントがブロックチェーンを用いて流通したら類型②にしたほうが良いという話なのだろうか。

・再度問うが本ディスカッションにおける「分散性」とは何を基準に議論されたのだろうか?米国や欧州の暗号資産専門家の多くは「実質的な運営主体やコミュニティリーダーが存在せず分散性を実現した暗号資産はビットコイン以外見当たらない」と認識している。参加した日本の有識者の見解を明らかにすべきだ。特定の政治家や業界団体に忖度した制度立案、恣意的な制度運用を危惧している。暗号資産に関する本質的な議論を深めてほしい。

・繰り返すが、ディスカッション・ペーパーの「特定の発行者を観念できない」における基準はかなり怪しく、誤解を招く表現だと考える。隠れた運営主体による「インサイダー、違法な勧誘、組織的な詐欺」の温床になっているコインは大量に存在しているが、金融庁にその認識はあるのだろうかと心配になる。

・まさに「類型の分類はその性質や実態に即して慎重に検討することが求められる。」と書かれている通り、類型分類作業が曖昧なまま密室で行われることは許されない。明確な精査基準が国民に示される必要がある。

◯ノンカストディアル・ウォレット

・「交換業者が介在しないノンカストディアル・ウォレットを利用した、中央集権的な管理者がいないDEXを通じた取引が一般の利用者の間で広がる可能性もあり、将来の実務の進展に留意する必要がある。」との記載は、暗号資産の特性上、非常に重要な内容である。

・P2P取引を前提とした暗号資産は、各個人が他者に依存せず自己管理することが原則であり、本来はカストディアン(取引所、レンディング事業者、ステーキング事業者など)に預けることを想定していない。銀行や取引所を介さず個人間取引に利用されるのが暗号資産の真の姿であり、それを阻害するような制度改定では本末転倒になる。

・現状、資産として価値保存機能が先行する段階だが、普及するに従って決済システムとしての価値交換機能が発展し、最終的には価値尺度機能が広まる。これは金融史上の通貨の発達過程に沿った自然な流れであり、暗号資産には通貨として機能する未来が間近に迫っていることを踏まえた議論を望みたい。

・蛇足だが、DEXには隠れた運営主体が存在しており、分散性は無いに等しい。SECが最大手DEXのユニスワップにウェルズ通知を送り調査していたことを重く見てほしい。米国の政権交代によって調査は終了したが、ロビー活動の成果による政治的な駆け引きと、分散型取引所の実態は分けて議論するのが妥当だ。UNIトークンを発行して収益を上げつつ「分散」を強弁している実態が明らかなのに「中央集権的な管理者がいない」「発行体は特定できない」と言えるのだろうか。日本の当局として、論理的かつ理性的な判断で政策準備に取り組んでほしいと切に願う。

自民党PTのときと同様、上記の文章をシェアするので、みなさんもお手軽な政治活動をやってみてください。ちなみに金融庁に実名や住所を晒すことになるので、匿名性を重視する方にはオススメいたしません。

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