IchiGo ちゃんの法的リスク(FUDじゃないよ)

つぶやき。

まとめ

モナパーティに関わってきた経験、および現時点で明らかになっている IchiGo ちゃんの仕様だけで判断すると、IchiGo ちゃんには暗号資産関係の日本の法律に対する、若干のリスクが感じられる。

しかしいずれにせよ、技術的に解消が不可能なものではないと思われる。

期待している。

TL;DR

無職業者BOTは法律系の士業でもないし金融庁の中の人でもありません。言うまでもないですが、本稿は法的助言ではありえません。

弁護士なり金融庁なりに相談する際の、叩き台程度にはなるかもしれませんが。

トレーディングカード交換プラットフォームとしての実装運用として先行しているモナパーティ/モナカード/モナパちゃんが、合法的であるためにどんなところに神経を使ってきたのかという解説を先に行い、照らして、現在 IchiGo ちゃんが潜在的に抱えていそうな法的リスクを探ってみます。

とはいえ、FUD する気はありません。十分に修正対応できると思いますし、無事にリリースされることを期待しています。

前提として、世界各国で暗号資産に関する法規制が異なります。ここでは日本を対象として限定します。

ブロックチェーンアプリケーションの構築に際しては、使うアセット(Symbol の場合は、モザイク。以下アセットで統一) 資金決済法が定める暗号資産に該当するかが大きな鍵となります。該当すると、いきなり敷居が高くなります。何としてもそこから逃れる必要があります。

幸いなことに、暗号資産の世界でのステークホルダの皆様によるアクティブな働きかけにより、ブロックチェーンのトレーディングカードは2号暗号資産には該当しない(もちろん1号暗号資産にも)という言質が取れています。

https://www.fsa.go.jp/news/r1/virtualcurrency/20190903-1.pdf によると…

物品等の購入に直接利用できない又は法定通貨との交換ができないものであっても、1号仮想通貨と相互に交換できるもので、1号仮想通貨を介することにより決済手段等の経済的機能を有するものについては、1号仮想通貨と同様に決済手段等としての規制が必要と考えられるため、2号仮想通貨として資金決済法上の仮想通貨の範囲に含めて考えられたものです。したがって、例えば、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、1号仮想通貨と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していないと考えられますので、2号仮想通貨には該当しないと考えられます。 

…というコメントが付いています。(強調筆者)

これは、言い換えると、「トレーディングカードやゲーム内アイテム等」と解釈できないアセットは、この条件に合致しないことを意味します。

モナパーティに当てはめると、販売可能フラグが落とされずに発行された全てのアセットは、1号暗号資産であるモナコインと、dispenser を介して交換可能です。よって、それらのアセットは 2号暗号資産とみなされると考えたほうが、法的に安全です。また、上場可能フラグが落とされていない全てのアセットも、2号暗号資産認定リスクの高い XMP アセットと交換可能なので、波及的に2号暗号資産認定となるリスクがあります。

(余談ついでに、ここ重大注意なのですが。モナパーティのアセットを ICO だのトークンセールだのに使ったら、原則アウトだと思ったほうが安全です。「ネタコインだから」は通用しません)

ですが、モナカードというサービスによってトレーディングカードやゲーム内アイテムとしての利用が明確になったアセットに関しては、2号暗号資産から特例的に除外されると解釈できます。

(ただし最終的な判断は金融庁次第。トレカに偽装した詐欺投資案件なんてのが続発したら、態度は豹変する可能性があります)

(現在示されているガイドラインに当てはめると、特定のモナパーティ・アセットを2号仮想通貨とみなされない別の方法として "前払式支払手段" とする手もあるはずですが、あれはあれで扱いが面倒だったりします。本稿の範囲を逸脱するので詳細は省略)

まとめると、モナパーティのアセットは、モナカードとして常識的に使っている限りにおいて、資金決済法から自由の身になれるという状態にあります。

モナパーティでは、先に紹介した dispenser、および DEX により交換頒布を行えます。ただし、売り買い相互の署名付きのメッセージで自動執行されます。

売買双方とも自分以外に鍵を預けないので、モナパーティはカストディ規制には抵触しません。

さらに、各ノードが別個に同じ執行処理をするので、業を行う「者」がおらず、仮想通貨交換業のライセンスが不要とする解釈が今のところ通用するようです。  (この点は、法解釈が変更になるリスクはあります。行き過ぎた DeFi をどう規制するかという、規制庁にとっては頭の痛い問題がありますので。)

参考: https://innovationlaw.jp/uniswap-dex-amm/

ただし、上掲リンクにもあるとおり、コントラクトへのアクセスソフトを提供する「者」については、現時点でも、媒介規制に該当する可能性があります。

実はアセット発行プラットフォーム向けウォレットの提供、特に DEX や販売機能付きのは、それなりにグレーと考えられます。今のところ金融庁は、煩いことを言っていないようですが。

だからといって金融庁が厳格運用したらモナパーティのウォレットが全滅するかというと、そこは抜け道があります。モナカードとの紐付きを確認できないアセットの操作を不可能にするよう少し細工すれば、そのウォレットは、資金決済法の現行運用からは自由の身です。

ここまでが、モナパーティが合法的であるために採ってきた道でした。

では、Symbol 上のプラットフォーム、IchiGo ちゃんの場合は。

以下、開発者のブログをざっと読んだだけの知識ゆえ、誤りを含む可能性があります。FUD 撒く目的ではないので、コメントでご指摘頂ければ修正検討します。

まず、売り買い双方の署名のみで取引が成り立つようなので、カストディ規制にはかかりません。マルチシグの使い勝手の良さは、 NEM から引き継いだ、このチェーンのメリットですかね。

しかし、売買を促すメッセージが中央集権的なサービス(IchiGoちゃん)により発行されるとなると、媒介規制に引っかかる可能性がそこそこありそうです。

おそらく簡単な解決方法は、「トレーディングカードに紐付いていないアセット(モザイク)は取引の対象としない」でしょう。

加えて「カードのトレーディングとしての(金融庁が抱く)常識の範囲を超えた高額取引を受け付けない」というのも安全装置としては必要かもしれません。「トレーディングカードに偽装した投資案件」となると、金商法との絡みもありますので。

モナカードの場合は、モナパーティがアセットの流動性支援プラットフォームであることにより逃げられることと逃げづらいところがあります。見た目は似たような機能を提供する IchiGo ちゃんにも、別の種類の逃げられるところと逃げづらいところがあるように見えます。

しかしいずれにせよ、技術的に解消が不可能なものではないと思います。無職業者BOTは担当の開発作業に忙しいので、他の試みに対して何ができるわけでもないですが、既に通った道の際どい部分を示すことくらいはできたかなと。あとは、サービスインのお知らせを待っています。

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