「ソロスの講義録」レビュー⑤【完】
/未来は誰にもわからない

「ソロスの講義録」レビュー⑤【完】 /未来は誰にもわからない

これまでジョージ・ソロスの見解をまとめてきましたが、それらを読んでくださった方の中には、まるで私がソロスの信奉者になったかのように感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。

たしかに、ソロスは慧眼です。

認識も、分析も、語りも、決して凡庸ではない。

しかしながら、完璧でもないのです。

 

ソロスは、社会情勢を分析し、未来の予測をすることがありましたが、必ず的中させてきたわけではありません。

 

『ソロスの講義録』の訳者前書きによると、その前の著作『ソロスは警告する』(2008年)において、ソロスはサブプライムローン問題が、未曾有の危機だと指摘したそうです。その邦訳版の出版の直後に、リーマン・ショックが起きたため、同書は「予言と警世の書として大ベストセラーとなった。」とあります。

しかしながら、『ソロスの講義録』において、リーマン・ショック後の景気回復について、ソロスは「ここまで進むとは思っていませんでした」と語っています(P159)。

つまり、ソロスは、景気の低迷がもっと長期的なものになると予測していたのに、それは外れてしまったわけです。

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