短編小説「蟹」

どうも分からない
カニというものが
いや昨日までは分かっていたのだが、どうも度忘れしたというか

カニとは何なのか
どうやったらカニになるのか
カニって書けばカニなのか
カニというものが実在するのだろうか

ただ昨日まではカニが分かっていたことだけは事実だ
覚えていた記憶とでもいうのだろうか
昨日まではカニカニカニカニ言われてそれが何なのかよくわかっていたはずだ

明日になるまでにはカニについてなんとか思い出したい
カニだからこそ、もっともっとカニになりたい
カニって多分美味しいんだろうな
ずっと考え続ければいつか思い出すことできるだろう
たまに記憶が飛ぶことがあるか、これまでもそうだった

今回も時間の問題だろう
カニ、カニ、カニ
おーい、カニや出てこいやーい

いかにカニカニカニカニいかにカニ

いカニか

ああ気持ち悪いもう喉まで出かかっているいカニかカニかカニかいカニか

わかった!

いや、だめだわからない

どうやらカニの迷宮に入り込んでしまったようだ
いカニか

思い出せ、カニ、カニ、カニ、カニ

その周りにあるものは赤いのか青いのか
毛皮をかぶっているのかそれとも毛が生えているのか
青い空の中にいるのかそれとも地上にいるのか
実在し得るのか空想上の存在なのか
カニという名前は本当にあるのか
光っていてもわからないからこそのカニなのか
いや多分それは違う
昨日まではそんなことは考えていなかったことは確かだ
つまり光ってはいない
じゃあどうやったら手のひらの上にカニを乗せられる?
名前はあるんだろうな
それだったら野球部にカニ入れればいいじゃん
マジわかんねー

これじゃ一向に前に進まねえ、これじゃあまるでカニじゃねえか

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