エルサルバドルの英断をめぐる報道まとめ(2021年6月6日~11日)
各種報道によると、中米の国エルサルバドルで、ビットコインを法定通貨とする法案が成立しました。(現地時間2021年6月8日、日本時間同9日)
仮想通貨を法定通貨とするのは、世界初だそうです。
まさに歴史的瞬間です!
さて、このエルサルバドルの法律について、簡単にまとめます。
◆法律は90日後に発効する。
◆法案には、ビットコインの値上がり益に対する税金の免除、ビットコインによる納税の許可、また国内の事業者がビットコインでの支払いを受け入れることなどが定められている。
◆これまでの法定通貨と、アメリカドルも引き続き使用される。
◆エルサルバドルは人口約640万人。最貧国の一つである。
◆国民の7割が銀行口座を持っていないともいわれ、国民の生活は海外からの送金に頼っている。移民先から本国の家族に向けた送金が国内総生産の2割を占める。
このほかにも、マイニングに参入するとか、しかも地熱発電でやるとか、気になる情報がいっぱいあります。
経緯を知るには、コインポストの記事がよくまとまっていて読みやすいと思います。
リンクを貼っておきます。
今後の展開に目が離せませんね〜
ところが!
日本の大手新聞は、皆これを小ネタ扱いなのでした。
特に、10日付けの朝刊で「法案成立」を報道したのは、五大紙のうち、日経新聞だけでした。
みんな無視かい!
では、恒例のメディアウォッチ、いってみましょう。
■じつは読売新聞が速報!■
五大紙の中では、読売が6日(日)夜、ウェブ版で報じました。
コインポストの記事が出たのが6日の朝だったので、同じ日のうちに報道したというのは、かなり早い動きですね。
これを、紙面では7日(月)の朝刊で報じました。しかも第二面の左上という、けっこう目立つ場所でした!!!
どうした読売!
今回はやる気じゃないか!
スタンス変えたのか?!
・・・そう期待していたのに。
なんと、法案が成立したことは、まったく報じないのでした!
どうした読売!
「見通し」だけ報じて、「実施」を報じないってのは、なに考えてるんだ?!
意味不明だぞ!!!
なにかの間違いじゃないかと思って、10日、11日の紙面を血眼になってめくったのに、エルサルバドルの記事はまったく掲載されていなかったのでした。
謎です。
スタンスをかえようとして、変えられなかったのかな?
いったん報道しようとして、「やっぱやめた」ってなったのかな?
10日の朝刊では、国会の党首討論なんぞに紙面を割いていて、「どうでもいいわ!」とつぶやいてしまった私でした。
(これはどの新聞も同じだったんですけどね)
■今回も日経新聞には”迷い”あり■
日経新聞は、7日(月)朝にウェブ版で報じました。コインポストの記事から24時間後、読売の第一報からだいたい9時間後です。
ちょっと“後追い”の感がありますね。それでも、詳報しているのでまだいい方です。
このときの記事は、けっこう好意的な感じなんですよ。長いですが引用します。
【メキシコシティ=宮本英威】中米エルサルバドルのブケレ大統領は、代表的な暗号資産(仮想通貨)であるビットコインを法定通貨にしたい考えを示した。
(中略)
ブケレ氏によると、エルサルバドル国民の約7割は銀行口座を持っていない。仮に口座があっても送金には高額の手数料が必要になる。ビットコインを用いれば、携帯電話などを通じて手軽に送金できる。法定通貨にすることでそうした流れが強まる可能性がある。
ブケレ氏はツイッターへの投稿で、ビットコインの資産価値は6800億ドル(約75兆円)に相当すると指摘。このうち1%がエルサルバドルに投資されれば「国内総生産(GDP)を25%押し上げる」との期待を示した。
ビットコインの国際送金を手がけるストライクは3月、エルサルバドルでアプリの配信を始めた。同社のジャック・マラーズ最高経営責任者(CEO)はブケレ氏の意向を歓迎し、「エルサルバドルでは世界で最も安全かつ効率的な決済ネットワークが提供されることになる」と述べた。
いかがでしょうか?
エルサルバドルの方針に対して、肯定的な面をピックアップしている感じがします。
読んでいてワクワクしませんか?
ところがなんと、翌日にはこれが反転し、トーンががらりと変わります。
8日(水)には、問題点ばかり指摘した記事を配信します。
曰く、「政府や中央銀行による管理が届かない恐れがある」「リスクは大きい」「不安の声が出ている」・・・等々、もうとにかく否定的です。
この反転は、いったいなんなんでしょう?
7日の記事のワクワク感に対して、8日の記事ではいきなり懐疑的な姿勢になっているのです。
そして、9日(水)の法案成立の記事です。
ウェブでは即日配信、紙媒体では、10日(木)の朝刊に載せたので、そこは抜かりないですね。
ただここでも、「法定通貨として定着するかは予断を許さない」とチクリ。
続いて、さらにマイニングについても記事にしました。
・・・こうしてみると、日経はわりと定点観測的な姿勢になってますね。
余談ですが、「マイニング(採掘)と呼ぶ大量のコンピューターを使う膨大な計算作業を・・・」という長ったらしい文章が、個人的にはツボでしたww
さて、私は以前、日経新聞が仮想通貨に対するスタンスを決めかねているのではないかーーという内容の記事を書きました。
今週も、それが見えましたね。
もう右往左往w
スタンスが固まっていくのかどうか、今後が楽しみです。
■朝日・産経・毎日は、特オチか?■
読売と日経以外の三紙は、今回はそろって期待はずれでした。
まず、三紙ともに、10日付けの朝刊には「法案成立」の記事を掲載せず、同日ウェブ版で配信しました。
朝日が8時29分、産経が10時40分、毎日が11時34分と、いずれも10日午前に配信したというのは、10日の日経の紙面を見て、あわてて追いかけた、という印象があります。
特落ち、と言っていいでしょうね。
しかも、中身は薄いので、読む価値はないです。
読む価値のない記事を堂々と配信するというのは、「読者は普通は1紙しか購読しない」という、昭和のスタイルへの甘えです。
しかも、「速報か詳報か」という基本姿勢を放棄しています。
メディアとしての責任放棄ですね。反省してほしいところです。
ちなみに、10日は、このネタをNHKも配信しています。
配信時間が18時ごろというのは、かなり遅いですけどね。(テレビで報じたのかな? 見たかった・・・)
それでも、スルーできなかったということから、“特オチ”だったことは明らかです
次は90日後の法律発効というのが大きな節目になるので、そのころにまた詳しい報道ができるか、注目したいところです。
■地方紙のほうが動きがいい?■
全国紙の不甲斐なさに対して、意外に地方紙の方が、ニュースバリューを正しく評価していたのかもしれません。
東京新聞は、ちゃんと10日の紙面で「法案成立」を報じました。
扱いは小さいですが、紙面にも、ウェブにも掲載しました。
東京新聞の記事は、共同通信の配信によるものですね。たとえば沖縄タイムスも、同じ文面の記事を報じたようです。
あなたの住む地域の新聞にも、載ったかもしれませんね。
・・・ひょっとすると、地方紙の方が、冷静に見ているのでしょうか。
それとも「他人事」扱いだから、ただの話題として掲載しているのかな?
興味深い動きです。
いかがだったでしょうか?
私が興味があるのは、これからますます仮想通貨が無視できない存在になっていき、その結果、旧メディア勢が紙面に掲載せざるを得なくなるという、そんな日がいつ到来するかです。
そういう意味では、旧メディア勢が、仮想通貨を過小評価したがるという今日の状況は、将来との比較のために、しっかり記録していかなければいけないと思っています。
また、今回の内容については、私がチェックできた範囲で報告しています。
もし漏れがあれば、指摘していただけると嬉しく思います。
(読売に載ってたよ!とか)
読んでくださって、ありがとうございました!