ビットコインのS2Fモデルは機能するのか

ビットコインのS2Fモデルは機能するのか

注意 : この記事は2021年4月時点の情報を元に作成しております。

ヨテイ(@yotei43) と申します。
自分のブログに書くか迷ったのですが、Spotlightのアカウントがあったのを思い出したので、試しに書いてみます。

S2Fモデルとは何か

皆さまはビットコインに関連する文脈として、ストック対フロー(Stock-to-Flow / S2F)モデルというものが存在していることをご存知でしょうか。
これはビットコインの貯蔵量(ストック)と供給量(フロー)から、その希少性を定量化し将来的な価格や時価総額を予測できるのではないかと多くの人に注目されているものです。

注目しているのは個人だけでなく、米国のグレイスケール社なども言及[1]していますし、マネックス証券のYouTube動画[2]でも言及されていて驚きました。
否定的な文脈ではありますが、ヴィタリック氏もS2Fモデルに言及[3]しており、国内外で賛否両論、注目されていることが伺えます。

このS2Fモデルは2019年3月に PlanB(@100trillionUSD) 氏によって提唱されました[4]。
S2Fモデルは非常に楽観的で強気なビットコイン価格を予想しておりまして、4月13日時点のツイートでは、2025年ごろには1BTCあたり1億円を超えるという予測結果が確認できます。

さらにPlanB氏はS2Fモデルを発展させたS2FXモデルというものも2020年に発表しておりまして、S2FXモデルではさらに強気な価格予想となっているようです[5]。

S2Fモデルは機能しているのか

果たしてこのS2Fモデルは有効に機能しているのでしょうか。
実際の価格推移をみてみると、2019年3月に書かれた最初の記事[4]の中で言及されている通り、2021年にBTC価格は55000ドルを上回り、この記事の執筆時点ではモデル通りにBTC価格が推移しているように思えます。

The predicted market value for bitcoin after May 2020 halving is $1trn, which translates in a bitcoin price of $55,000. That is quite spectacular. I guess time will tell and we will probably know one or two years after the halving, in 2020 or 2021.

(2020年5月の半減後のビットコインの予測市場価値は1兆ドルであり、これは55,000ドルのビットコイン価格に相当します。それは非常に壮観です。時が経てばわかると思います。おそらく、半分になってから1年か2年後、2020年か2021年になるでしょう。)

(time will tellってかっこいいよね)

この記事を書いている私自身もビットコインを保有していますので、このS2Fモデルが今後数十年に渡って有効に機能し、ビットコインの価格が大きく上昇してくれればとてもハッピーなのですが、そんなにうまい話があるとは思えず、どうしても懐疑的になってしまいます。
私と同じように、S2Fモデルが現実になれば嬉しいけれど、実際のところは少し懐疑的になってしまうなぁという方も多いのではないでしょうか。

S2Fに対する批判

ウェブ上の情報を漁ると、ビットコインのS2Fモデルを批判している人は多く存在しているようです。
そういった批判の中でも、「それなりに説得力があるかも」と私が個人的に感じたものが3つあるため、この記事で紹介したいと思います。
S2Fモデルに対して客観的に考えるための足掛かりになれば幸いです。

批判1 : 世界中の資産は有限であることが考慮されていない

QuantMario(@QuantMario)氏はS2Fモデルに関して次のような批判をしており、「LGS-S2F」という改良したモデルを発表しています[6]。

S2F assumes there is an unlimited amount of money in the world that can flow into Bitcoin. But there is not. The total value of all the property in the world is estimated to be around $217 trillion.

(S2Fは、ビットコインに流入できる金額が世界に無制限であると想定しています。しかし、ありません。世界のすべての資産の総額は約217兆ドルと推定されています。)

[6]の記事で言及されているように、2016年時点の世界中の資産を合わせた総額とされる217兆ドル[7]を、オリジナルのS2Fモデルは10年強の期間で簡単に超えてしまいます。
経済は成長するものですので全く不可能とも言い切れませんが、ドルのハイパーインフレでも起きない限り、これは非現実的に思えます。

ちなみにQuantMario氏のLGS-S2Fモデルでは、2035年ごろに金の時価総額(約10兆ドル)を超え、1BTCあたり5000万円に到達すると予想されています。

批判2 : 世界中の需要は有限であることが考慮されていない

Jurrien Timmer(@TimmerFidelity)氏は1ドル以上残高があるビットコインアドレスの数からビットコインに対する潜在的な需要を予測し、価格の予想モデルに反映しています[8]。

Jurrien Timmer氏はスレッドの中で、ビットコインのアドレス数と携帯電話の普及について言及し需要曲線を推定しているのですが、その点に関しては議論の余地がかなりありそうです。

ちなみにJurrien Timmer氏の予想モデルでは2035年までに1BTCあたり1億円を超えると予想されています。

批判3 : マイニングコストや電力消費の影響が考慮されていない

crypt∞li(@cryptooIi)氏の記事では、現状のマイニングコストを維持した状態でS2Fモデル通りに価格が上昇した場合、2032年には全世界の電力の348%がビットコインのマイニングのためだけに消費される計算になると主張しています[9]。
つまりオリジナルのS2Fモデルでは、地球3個分の電力を消費してもマイナーが黒字となってしまうほどの価格に、わずか10年ほどの時間で到達するということです(マイニングコストが現状と同じと仮定した場合)。
当然、それほどの電力を消費するのであれば電気代やマイニングコストが今と同じというはずもなく、さすがにこの消費電力の試算は皮算用が過ぎるかと思います。それでもマイニングコストという視点からみるとS2Fモデルの予想がどれほど強気で楽観的であるかということがわかるかと思います。

ちなみにcrypt∞li氏の予想モデルでは2032年の半減期後に1BTCあたり1億円を超えると予想されています。

結論 : わからん

未来の価格なんてわかりません。
今回の調査で、S2Fモデルは楽観的過ぎるかなという印象を受けました。
(ビットコインを保有している者として、オリジナルのS2Fモデルが現実となれば万々歳ですが)

おそらくビットコインを持っていない多くの人にとっては、QuantMario氏のLGS-S2Fモデルにおける2035年5000万円到達でも「高すぎ」という印象なのではないでしょうか。

参考文献

[1] Grayscale(@Grayscale),Grayscale on Twitter
[2] マネックスオンデマンド [マネックス証券],【緊急配信①】ビットコイン等の暗号資産はなぜ上がったのか?また上がるのか?(収録日:2020/11/27)
[3] vitalik.eth(@VitalikButerin),vitalik.eth on Twitter
[4] PlanB(@100trillionUSD), Modeling Bitcoin Value with Scarcity
[5] PlanB(@100trillionUSD), Bitcoin Stock-to-Flow Cross Asset Model
[6] QuantMario(@QuantMario),The LGS-S2F Bitcoin price formula
[7] City A.M.,The total value of all the property in the world is $217 trillion - 2.7 times the world's GDP
[8] Jurrien Timmer(@TimmerFidelity),Jurrien Timmer on Twitter
[9] crypt∞li(@cryptooIi),Bitcoin - stock to flow model

この続き : 0字 / 画像 0枚
100

会員登録 / ログインして続きを読む

関連記事

記事を書いた人

SNSにシェア