「パラノイド・ウォレット」事件の教訓

「パラノイド・ウォレット」事件の教訓

本記事は @hodlonaut 氏による最新記事「The Paranoid Wallethttps://www.citadel21.com/the-paranoid-wallet (2026年8月7日)をAIにより要約・翻訳したものです。

2026年7月30日から8月の最初の週に、ビットコインコミュニティは、数千人のユーザーから推計2,000 BTC(約1億3,000万ドル相当)以上が奪われるという衝撃な盗難事件を目の当たりにしました。これは一般的なフィッシング詐欺やウイルスによるものではありません。ウォレットが作成されたその瞬間に、シードフレーズを生成するプロセスに隠れた欠陥があったことが原因でした。

事件の中心となったデバイスは、セキュリティを重視するユーザーの間で長年「最高基準」とされてきたハードウェアウォレット、COLDCARDでした。このデバイスは、コンピュータに一切接続しない「エアギャップ」状態で使用できる「パラノイド(慎重)」な設計を売りにしていました。

しかし、今回の事態において物理的な隔離は無意味でした。ウォレットが生成した「乱数」が、実際には予測可能なものだったからです。その結果、攻撃者はCOLDCARDのデバイスに触れる必要すらなく、公開されているブロックチェーンから弱い鍵を「推測」して資金を盗み出すことができたのです。

何が起きたのか?

ビットコインのウォレットは、推測が不可能な「真の乱数(エントロピー)」に依存しています。しかし2021年3月、製造元のCoinkite社は、ライセンス変更に伴うコードの全面刷新を行いました。この際、コードに含まれていたたった1文字の誤りにより、ウォレットは安全なハードウェア乱数生成器を無視し、推測可能なソフトウェアによる予備の生成方法を使用するようになってしまったのです。

訳者注:この致命的なバグは、ファームウェア4.0.0以降を使用した機種、MK3に非常に弱い鍵を生成させました。その後のアップデートでも、乱数生成の問題は完全には解決されず、MK4, MK5, Qでも約束された強度には程遠い弱い鍵が生成され続けていました。興味深いことに、4.0.0より前のファームウェアで生成された鍵は問題ありませんでした。

「内部犯行」を疑わせる不穏な詳細

会社側はこれを単なるミスだと主張していますが、ソースによれば、この欠陥が意図的であった可能性を示唆するいくつかの不可解な事実が浮かび上がっています。

  • 偽のペンネームによる自作自演: CoinkiteのCTOであるピーター・D・グレイは、「doc-hex」と「switck」という2つの別名を使い、GitHub上で架空のやり取りを演出しました。彼は一方の人物として自分のもう一つの人格に許可を求めることで、自作の欠陥ライブラリをあたかも「外部からの寄稿」であるかのように偽装していました。
  • 不可解な選別: ファームウェア内で乱数を必要とする箇所は7つありましたが、ファイル消去などの重要度の低い5つは安全なハードウェア生成器に残されました。一方で、最も重要な**「ウォレットのシード(種)」を生成する2つの経路だけ**が、欠陥のある新しいライブラリへと移されていたのです。
  • 専門家らしからぬ「単純ミス」: CTOのグレイは、この分野で数十年の経験を持つファームウェアの専門家です。批判者たちは、彼のような熟練者が、製品の最も機密性の高いコードでこれほど初歩的な1文字のミスを犯し、それを5年間も見逃し続けるのは不自然だと指摘しています。
  • 無視された警告: 盗難が始まる1年以上前の2025年5月、著名な開発者であるジェームズ・オバーンが、まさにこのコードの危険性を具体的に警告していました。しかし経営陣は、「バグがあれば何年も前に気づいているはずだ」と彼の主張を退けました。
  • 「リタイアメント・アタック」の皮肉: 開発者が後で資金を盗むためにエントロピー生成に「バグ」を仕込む行為は、業界で「リタイアメント・アタック(引退攻撃)」と呼ばれます。2022年、CEOのNVKは、国家がプロジェクトを破壊する方法として**「後で悪用できるバグを仕込む」**という手口を語っていましたが、それが自社の状況と酷似する結果となりました。
  • ライセンスへの執着: この欠陥は、技術的な必要性からではなく、競合他社を排除するためのライセンス紛争に伴う、120ファイルに及ぶ急なコードの書き換え中に混入しました。

ビットコインユーザーへの重要な教訓

  • 「パラノイド」の錯覚: デバイスが外見的に「エアギャップ」で「超安全」であっても、核心となる数学(エントロピー)に欠陥があれば、コインは決して安全ではありません。内部の数学的ロジックが壊れていれば、ブロックチェーン上の資金は守れません。
  • 複雑化のリスク: このバグは、技術的な必要性よりも、法的・ライセンス的な懸念から急いで行われた120ファイルに及ぶコードの書き換え中に混入しました。
  • 信頼せず、検証せよ (Don't Trust, Verify): ビットコインコミュニティのこのモットーは今回機能しませんでした。ユーザーがウォレットの乱数源を独自に検証するのではなく、創業者の評判を信頼してしまったからです。
  • サイコロが命を救った: Coldcardが提供していた「手動でサイコロを振ってシードを作る」機能を利用したユーザーは、壊れたソフトウェアの乱数に依存しなかったため、被害を免れました

***

@hodlonaut 氏は、信頼を必要としないはずのシステムが、結局は一つの企業と創設者の検証されていない評判、そして誰にも精査されなかったコードに依存していたことが今回の悲劇の原因であると結論づけています。

そして、ビットコインの核心であるモットー「信頼せず、検証せよ(Do not trust. Verify.)」を、単なるスローガンではなく文字通りに受け止め、システムの根幹に至るまで徹底的に適用すべきだという教訓で物語を締めくくっています。

一般的には、取引所に預けておくより安全だと言われてきたビットコインの保管方法で、何の落ち度もなかったユーザーが多くの資産を知らぬ間に一瞬で失ってしまった今回の事件は、筆者にとってもショックでした。今のところ日本語圏での被害は聞いていませんが、盗難被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。

なお、この事件のすぐ後に、ライトニングのインフラを提供するBoltz が何らかの事情でサービスを停止、BTCPay Server の LND を使用するライトニングウォレット上のビットコイン盗難事件も起きており、ビットコイン、特にセルフ・カストディ全体に対する攻撃が高まっているようです。

それに対して、ビットコイン業界内では有志エンジニア約20名が Bitcoin Red Team を形成し、AIによるオープンソースコードの徹底的なチェックを行い、脆弱性の高いバグの発見に力を注いでいます。一方で、多くの資金を持つであろうビットコイン関連企業(StrategyやCoinbase含む)が立ち上げた Bitcoin Security Consortium  の動きが鈍いことに批判の声も聞かれました。 

非エンジニアの自分にできることは注意喚起くらいですが、自分も防衛力をあげなくてはと思い、サイコロを購入しました。本来はウォレットのソフトウェアがサイコロを振る以上のランダム性が確保された乱数を作成するので、サイコロは不要と言われてきたのですけどね。その前提が崩れてしまったのは非常に残念です。

今回の出来事をきっかけに、長い目で見ればビットコインの安全性はさらに高まっていくはずです。「自由」を守ることは決して簡単ではなく、相応のコストが伴います。それでも今は、どのような未来を選ぶのかが問われる、大きな分岐点にあるように思います。

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