期待値が高そうなAMPLのトレード戦略
こんにちは。2020年の相場盛り上がっていて嬉しいですね!今日は、2020年を代表するトークンの一つであったAMPLというトークンの性質を利用したFTXでの簡単なトレード戦略を共有してみたいと思います!
結論
結論からいうと、トレード戦略としては、「AMPLのUSD建価格が十分(0.7ドル程度など)下がったらFTXの先物をレバレッジ1倍以下でロングする」というものです。これが何故有効か説明します。
AMPLの性質
今では忘れられた感がありますが、AMPLは、2020年を代表するトークンのひとつだと思います。一時はUniswapでの流動性で不動の一位を保っていたこともありました。
AMPLが盛り上がった理由はただ一つ、リベースという革新的な仕組みを導入したためです。リベースというのは簡単にいうと、取引価格に応じて供給量を毎日変動させるものです。
以下は、AMPLの供給量(supply)の推移です。ご覧のように増えたり減ったりしているのがわかります。供給量が増えたり減ったりするので、その分時価総額も変動します。
https://www.ampleforth.org/dashboard/
非常に斬新であったのは、このリベースが行われる際に全員の保有しているAMPLの量が自動的に一定の割合で増えたり減ったりすることです。
例えば、今誰かのウォレットに100AMPLあったとすると、それがリベースによって102AMPLになったり98AMPLになったりするわけです。このリベースは、AMPLの場合、1日1回決まった時間に行われます。
(ちなみに、詳しくは調べていませんが、リベースという概念を最初に導入したのはAMPLではないと聞いたような気がします。リベースという概念を世に知らしめたのはAMPLであると言って良いかと思います。この辺りがもう少しよく分かったら更新します。)
リベースの割合の計算方法
リベースの割合の計算方法は簡単です。Oracleと呼ばれる参照価格と目標価格の差から計算が行われます。Oracleを P_oracle、目標価格を P_target とすると、リベースの割合は以下のように計算されます。
目標価格は、現在は 1.021ドルです。
Oracle は1日の出来高加重平均で決まります。
例えば、Oracleが1.121ドルであるとしたら、リベースの割合は0.01 = 1.0% となって、全員のAMPLがリベース時に0.2%の割合で増えることになります。
ちなみに、リベースの割合がある敷居値より小さい場合は無視され、リベースは発生しません。
この保有トークンがどんどん増えていくという性質が投機を呼び、ちょっとしたバブル相場を形成したのは記憶に新しいところです。
ネガティブリベースの存在
AMPLの量はリベースによって減ることもあります。これはネガティブリベースと呼ばれています。(日本語でいうと負のリベースということですね)
先ほどの式をみると、Oracle が目標価格より低かった場合は、リベースの割合はマイナスになることがわかると思います。
例えば、Oracle が 0.9021 ドルであったとすると、リベースの割合は、-0.01 = -0.1% となって、全員のAMPLがリベース後に-2%の割合で減ります。
保有しているトークンがどんどん減っていくというのも非常に興味深いですよね。
AMPLの理念
一応理念としては、このように供給量を増やして価値を希薄化したり、供給量を減らして価値を希少化したりして、取引レートを目標価格に近付けて安定化させるという建前になっています。正直なところ、実態は社会実験と化していて実際の取引レートの推移は目標価格に収束せず、かなり変動しています。以下はOracleの推移です。
https://www.ampleforth.org/dashboard/
AMPLのスポット価格はUniswapで決まる
AMPLの価格のドライバーは、Uniswapによる交換です。
AMPLはそもそもあまり取引所に上場していません。これは推測ですが、おそらくリベース時の扱いが厄介なのではないかと思います。話題の銘柄は積極的に上場させるBinanceにも結局上場しなかったところをみると、各ユーザのトークンの量を毎日減らしたり増やしたりする処理はやはりかなり厄介なのではないかと思います。
また、KuCoin でのスポット市場は割と大きかった印象ですが、先日のハッキング事件によって一気に勢いを失ってしまったようです。CoinGeckoで先ほど確認したところ、現状では、スポット市場での出来高の6割を Uniswap V2 が占めているようです。
Uniswapとリベースの相性は抜群
Uniswapとリベースの相性は実は抜群です。
Uniswapでのトークンペアの交換レートは、トークンペアのプールにある2つのトークンの量のみで決まります。今 AMPL-ETHのプールを見たところ、17,896ETHと7,278,530AMPLがプールされていました。すると交換レートは、1AMPL=17896 / 7278530 = 0.00245873823 ETH となります。簡単ですね。
さて、ここで面白いのはリベース時の動作です。AMPLのリベース時には全てのAMPLが一律の割合で減るのだから、当然トークンペアのプールのAMPLも同じ割合で減ります。(Uniswapのトークンペアも実態はETHのひとつのアドレスに過ぎません。)
さて、仮に上記のプールの状態に対して、+2% のリベースが発生すると、AMPLの量は2%増え、交換レートはその瞬間に 1/1.02=0.98 程度の割合で変化します。-2%になるということですね。このレートの変化はリベース後に文字通り一瞬で起こります。そして、もちろん ETH のUSD建価格は一瞬では変動しないので、AMPLのUSD建価格は一瞬で -2% になります。簡単に言えば供給量が増えた分、価格が下がったということですね。
逆にネガティブリベースが発生すると同じ仕組みにより、AMPLのUSD建価格は一瞬でリベースの割合だけ上がります。
これが相性が抜群という理由です。つまり、AMPLの理念みたいなものが一応きちんと働いているんですね。
FTXでの先物取引
FTXの頭取であるSamは天才なので、AMPLが盛り上がるやいなや無期限先物を上場しました。ごく簡単にこれを説明します。
AMPL-PERP(AMPL無期限先物)の取引ページに行くと、USDをいくらか担保に入れて10AMPL単位でポジションの契約を作ることができます。
この注文を行うと、以下のようにポジションが契約されます。ポジションの単位(Position Size)はAMPLであることに注意してください。
トレード戦略の説明
AMPLはDeFiバブルの際に投機的な値上がりをしたために、FTXでのショートポジションにより大きな利益を出すことができました。このためAMPLのトレードといえばショートのイメージが強いと思います。しかし、実際はロングポジションは面白いと思っています。
戦略を再掲申し上げますと、AMPLのUSD建価格が十分(0.7ドル程度)下がったらFTXの先物をレバレッジ1倍以下でロングする、です。
先ほど見たように AMPL はネガティブリベースの仕組みによりUSD建価格が変動します。参照価格(Oracle)が0.7ドルともなると、リベースの割合は約−3%となり、この供給量現象によってリベース後にUSD建の価格が約+3%となる強力な上昇圧力がかかります。1ドル以下である限りはこの上昇圧力がかかり続けるため、いつかは価格が上昇していきます。
仮に、0.7ドルでポジションを作ったとすると、少なくとも数ヶ月の間には1.0ドル付近まで価格が戻る可能性が極めて高いです。こう考えると、数ヶ月で+50%近い利益を得ることができるわけですからこれは相当に良い期待値ではないかと思われないでしょうか?(追記:FRの支払いがあるためにその分利益が削られます。一番下の追記を参照してください)
草トークンの値段は一般に、長い時間軸ではゼロに近付いていくため短期的な投機売買で利益を出すのが一般的ですが、AMPLの変わった性質を利用してあまり消耗せずに中期的な利益を狙うのも面白いのではというのがこの記事の趣旨です。
ちなみに、0.7ドルというのは特に根拠があるわけではなく、その程度まで引きつければまあ期待値をあげることができるのではないかという程度の値です。ネガティブリベースによって、0.7ドル以下に留まる限りかなり強力な上昇圧力がかかり続けるからです。
レバレッジを1倍以下にするのは、万が一の場合にも絶対にロスカットされないようにするためです。リベースがあるとは言え、一瞬でも価格が限りなく0に近付くことがないとは言えないのでこれは非常に重要です。(特にAMPLの先物のスポット価格参照先は出来高が薄いです。Uniswapは含まれていません。)いつかは1.0ドル付近まで戻るとしても、レバレッジをかけ過ぎているとその前に清算される可能性がありますよね。
何故この手法が有効なのか
何故こんな簡単な手法が有効なのでしょうか?その答えは極めて簡単です。FTXのAMPL先物はリベースされないからです。
先ほど見たように、先物を10AMPL買った(ロングした)としましょう。その10AMPLの先物契約はいつまでも10AMPLです。リベース時に減ることがありません。先物のAMPLは実際は「AMPLっぽい何か」なんですね。AMPLっぽい何かのデリバティブ取引の契約をした言ったところでしょうか。
現実世界のAMPLは1ドル以下であれば供給量がどんどん減っていきます。もし永久にAMPLが1ドル以下に留まるとすれば、いつか必ずあなたのロングした先物のポジションよりも全供給量の方が少なくなります。そういうことが起こる可能性は非常に低いでしょう。このため1ドル以下での先物トレードの期待値は長い目で見れば高くなると思われます。
なぜAMPLの価格は大きく下がるのか
現在までの価格推移をみると、AMPLの価格は0.7ドル以下まで大きく下がっていることがあります。また、価格がなかなか1.0ドルまで戻らずに停滞することが多いです。なぜこういうことが起こるかというのはごく簡単に説明がつくと思います。
それは、コストをゼロで仕入れている人が多くいるからですね。その人たちにとってはいくらで売却しても採算が取れるのです。トークン配布、コイン配布においてはよくある話ですが、非常に歪な構造になっていると思います。この辺りについて理解しておくのも大切で、逆にいうと、この戦略ではこのように常に売り圧がかかって価格が大きく1ドルから乖離しやすいという歪な性質を逆に利用して、優位な価格でポジションを構築してみようということにもなっております。
伝えたかったこと
先物がリベースされないというのは、ひとつの歪みと言ってもいいかもしれません。AMPL先物のトレードを触ったことのある方もこの点についてあまり意識されていなかったのではないかと思います。(追記:FRの支払いに歪みが織り込まれているというご指摘を頂きました。この点について下に追記してあります。)
この記事で一番伝えたいことは、AMPLロングで稼ごう!、ということではなくて、こういう風に仕組みを追求して、色々と研究を行うと面白いし儲かるんじゃないでしょうか!?ということです。(そしてこっそり私に教えてください!)
リスク
当然この戦略にもたくさんのリスクがあります。思いつくものをあげてみると
- FTXがハッキングなどにより顧客資産を失う
- FTXが何らかの理由により機能不全になる
- FTXのAMPLの先物取引が廃止になる
- AMPLの先物取引の流動性がほとんどなくなってしまう
- AMPLの未知の脆弱性が発見され価値が0になってしまう
- AMPLの運営がコントラクトを更新しようとして誤って致命的なエンバグをしてしまい価値が0になってしまう
- AMPLの運営が全てのトークンを売り払ってEXITする
補足すると、例えばKuCoinのクラッキングにより多額のAMPLが盗まれた際に、盗まれたAMPLを運営は全てブラックリスト入りさせています。運営はかなりの力を持っていることがお分かりいただけると思います。
この辺りのリスクを考えつつトレードするのが大切ではないかと思います。
追記
FRの支払いがあって、リベースでの上昇圧力に対して釣り合いがとれているのでは?というご指摘を頂きました。この点に関してはすっかり失念しておりました。申し訳ありません。ご指摘ありがとうございます!
現時点までの値動きとFRの推移をみると、FRの支払いをしても値上がり益の方が十分大きいと考えています。これはリベースをあまり意識しないでトレードしている層が一定数いるためだと考えられます。しかし、FRの支払いによってかなり収益が削られるのは確実です。運営の売り圧が強くなるなどして、0.7ドル以下などの値で留まる期間が非常に長くなると、FRの支払いと値上がり益が逆転してしまう可能性は十分あります。
簡単にいうと、リベースがないという歪みはFRに織り込まれているということで、そうそう簡単に儲かるもんでもないぞとも言えますね。
この点は、非常に重要なリスクですのでもしロングポジションでトレードしようという方がいらっしゃったら十分にご注意ください。失礼いたしました。