手に取ることができるビットコイン?フィジカルビットコインとは?
ビットコインといえば、完全にデジタルな存在。 ブロックチェーン上に記録される、目に見えないお金です。でも実は、ビットコインの初期に「これを実際のコインにしたら面白いのでは?」と考えた人たちがいました。そうして生まれたのが、実際にBTCが入っているフィジカルビットコインです。日本では物理ビットコインとも呼ばれます。
ただの記念コインではありません。 金属製のコインやチップの中に秘密鍵が封入されていて、ホログラムシールで保護されています。そのシールを剥がして秘密鍵を使えば、ブロックチェーン上のビットコインを実際に引き出すことができる仕組みです。デジタルなお金なのに、手で持てる。 このギャップこそが、フィジカルビットコインの一番の魅力かもしれません。
伝説の始まり:Casascius(2011–2013)
フィジカルビットコインの歴史を語るうえで外せないのが、Casascius(カサシウス)コインです。2011年、Mike Caldwell氏によって制作が始まりました。素材は真鍮、銀、さらには金まであり、見た目もかなり本格的です。

表面にはビットコインアドレスの一部が刻印され、裏面のホログラムの下に秘密鍵が隠されています。ホログラムが破られていなければ「まだBTCは引き出されていない」と判断できます。
額面は0.1BTCのような少額から、100BTC、さらには1000BTCという驚くようなものまで存在しました。当時の価格では想像できなかった価値が、今ではとんでもない金額になっているわけです。2025年末には1000BTCコインが1.8億ドル近い値をつけました。

2013年に規制の問題で製造は終了しましたが、それによって逆に希少性が高まりました。 今では、未使用(ホログラムが完全なもの)のCasasciusコインは、額面以上のプレミア価格で取引されています。ビットコイン黎明期のタイムカプセルと言ってもいいでしょう。
初期を支えた先駆者:Lealana(2013–2015)
2013年6月ごろ、ハワイ在住の Noah Luis 氏(コミュニティでは smoothie の名前で知られています)が手がけたのが、Lealana(リアラナ)コインです。時期的にはちょうど Casascius コインの製造終了と重なる頃で、「ポスト・カサシウス世代」とも言える存在です。
Lealana コインは、真鍮・銀・金メッキ銀など複数の素材で製造され、額面はおおよそ 0.1 BTC から 1 BTC まで。デザインはシンプルで上品な印象があり、コレクターからの評価も高いシリーズです。

仕組みは初期のフィジカルビットコインと同様で、 表面に公開アドレス、裏面のホログラムの下に秘密鍵が隠されています。ホログラムが完全であれば、まだBTCが引き出されていないと確認できます。
発行枚数は比較的少なく、特に銀や金メッキのバリエーションは希少性が高めです。そのため、未使用のまま残っている個体はオークション市場でも注目されることがあります。また、購入する時点ではBTCが入っていない「unfunded / unloaded」タイプのコインも流通しています。
第二世代:Denarium(2015–2019)
Casasciusの後に登場したのが、フィンランドの Denarium (デナリウム)コインです。2015年頃から真鍮・銀・金製のコインを制作し、ホログラムで秘密鍵を保護するスタイルを継承しました。さらに、購入時にBTC額をカスタマイズできるなど、柔軟な仕組みも提供していました。

特に印象的だったのは、各コインの状態を確認できる公開検証システム。 コレクターにとって安心感のある設計でした。現在は製造終了となっていますが、フィジカルビットコインの進化を語るうえで重要な存在です。
現代的アプローチ:Satori Coin(2016–2018; 2025~)
フィジカルビットコインは、形を変えながら今も進化しています。日本発の Satori Coin は、2016年にポーカーチップ風のデザインを採用したユニークなコインを発売しました。少しでも多くの人にビットコインに触れてもらうアイディアから生まれ、アート性とビットコインの機能性を組み合わせたスタイルでした。

当時は、無料配布キャンペーンや、ガチャポンでの販売などもあり、画期的でした。おもちゃのようにも見えるコインですが、本物の 0.001BTC が入っており、まだ日本のいろいろな場所に眠っているかもしれません。Spotlightで「悟コイン」を検索すると記事がたくさん見つかります😊
海外で Satori Chip とも呼ばれたオリジナルコインは2018年で発売中止となりましたが、昨年2025年にカムバックして発表された Satori Coin「Gi/義」シリーズでは、マルチシグ構造を取り入れるなど、より高度なセキュリティ設計が採用されています。 限定生産、シリアル番号入りなど、コレクション性も意識されています。

2026年2月にはシルバーコインの「Chi/智」も発表されました。Satori Coinは、そのデザインにサトシ・ナカモトやビットコインの思想が取り入れられており、「ビットコイン文化を形にしたアート作品」という側面が特徴です。

残念ながら、現在は日本から注文ができませんが、裏ワザとしてHeritage Auctions や Scarce.city のチャリティーオークションに出品された時に入手するチャンスがあります。時々、X(Twitter)に情報がポストされています。
なぜフィジカルビットコインは面白いのか?
正直に言えば、ビットコインはデジタルで完結するのが本来の姿です。 ハードウェアウォレットもある今、わざわざ金属製のコインやチップにする必要はないかもしれません。
それでもフィジカルビットコインが特別なのは、 ビットコイン初期の遊び心や実験的な精神が感じられるからだと思います。また、BTCを持っていない大切な家族や友人に、形あるものとしてBTCを手渡しできるのも素敵です。もちろん、既にビットコインを持っている人にも喜ばれるギフトではないでしょうか。
Not your keys, not your coins.「秘密鍵を持つ人が、ビットコインを持つ人」 この原則を、手で持つことができる形で表現したのがフィジカルビットコインです。そこには歴史、物語、そしてビットコインのカルチャーが刻まれています。
デジタル革命の象徴であるビットコインが、 あえて「触れることのできる存在」になっているのは、なんだか面白いと思いませんか?
今回こちらで紹介した以外にも、様々なフィジカルビットコインが流通していますので、興味を持った方は専門サイトなどをチェックしてみてください。
なお、2016年に出版された Encyclopedia of Physical Bitcoins and Crypto-Currencies はフィジカルビットコインを扱った貴重な本と言われています。
ビットコインの取り出し方
フィジカルビットコインは、コレクターズアイテムとして未開封のまま保管することに価値を見出す方もいます。一度ホログラムを剥がすと「未使用」の状態ではなくなるため、実行前に慎重に判断しましょう。
コインからBTCを取り出す場合は、ホログラムの裏に隠された秘密鍵のQRコードを、秘密鍵のスウィープ(sweep)に対応したウォレットで読み込みます。
⚠️ 必ず「インポート」ではなく「スウィープ」を選択してください。 インポートは秘密鍵をそのまま使用し続けるため、安全性が低下する可能性があります。スウィープは、秘密鍵に紐づく残高を新しいウォレットへ送金する仕組みです。
また、誤ってスマートフォンの通常カメラで秘密鍵を読み取り、その画像をクラウド保存したり、Google検索などをしたりしないよう十分ご注意ください。秘密鍵(QRコード)は絶対に第三者と共有しないようにしましょう。
高額なBTCを引き出す場合は、信頼できるデバイスを使用し、可能であればネットワーク接続(Wi-Fi、Bluetoothなど)を遮断した状態で作業してください。 理想的には**エアギャップ環境(インターネットから完全に隔離された環境)**での操作がより安全です。
また、スウィープ完了後は、その資金を新しく作成したウォレットへ移動することをおすすめします。秘密鍵は一度露出した時点で安全とは言えなくなるため、長期保管には新しいシードフレーズで生成されたウォレットを使用する方が安心です。
オンチェーン(L1)取引となるため、事前にネットワーク手数料を確認し、ウォレット側で上限を設定できる場合は指定することをおすすめします。手数料は常に変動するため、作業前に最新のネットワーク状況を確認しましょう。
代表的な対応ウォレット:
- Blockstream Green (Mobile)
- Electrum (Desktop/Mobile)
- Exodus(Desktop)
- Mycelium Wallet (Mobile)
詳しい使い方は、各ウォレット公式ページのヘルプページ等をお読みください。SNS、テレグラム、ディスコードなどでは公式サポートのふりをした詐欺も多いので十分ご注意ください。
フィジカルビットコインは「秘密鍵そのもの」を扱います。一度でも鍵が第三者に知られた場合、そのBTCは完全に失われる可能性があります。取り扱いは、慎重すぎるくらいがちょうど良い、と考えましょう。




