ビットコイン価値の派生
2020年以前までは、ビットコインの価値の根幹は、以下の3点で構成されていたと考える。
1 ブロックチェーンによる信頼担保
2 発行2100万枚
3 送金の利便性
以下で詳しく説明していく。
1 ブロックチェーンによる信頼担保
ブロックチェーンは、ビットコインの技術であり、データの信頼性を構築している。現在では、その技術の有用性が様々な分野で使われ始めており、ビットコイン以外の「仕組み」にスピンオフしている。その他、仕組みにスピンオフされることは、ビットコインの価値とは関係ないと思われるが、まわりまわって、ブロックチェーン技術により成り立っているビットコインの「信頼性」の再認識に繋がる。
「信頼性」はイコールで「価値」と結びつけることができる。
2 発行2100万枚
ビットコインは無限に新規発行できない仕組みになっており、2100万枚と決められている。価値の定義の基本である「希少価値」を生み出している。
3 送金の利便性
ビットコインは、ブロックチェーンにより、安い手数料で、24時間、365日、いつでも送金することができる。ただし、ビットコインのブロックは、10分ごとに生成され、取引量によっては送金に時間がかかることがある。しかし、近年では、ブロックチェーン外で取引を行なう「ライトニングネットワーク」の普及により、リアルタイム送金が可能になった。
ビットコインは、金融機関による送金が抱える高い手数料と、送金の時差、為替などの問題を解決していることから、「技術的価値」を生み出しているといえる。
2020年以前までは、上記3点のみがビットコインの価値そのものだったと考える。送金の利便性を含むブロックチェーン技術は、確かに魅力的で、様々な問題解決や効率性を高めるアイディアだ。
そして、2020年以降、ビットコインの価値が派生した。つまり、ビットコインの価値の根幹である上記3点に加えて、新たな価値が創造された。以下で説明していく。
4 インフルエンサーによる価値の創造
2020年以降、大企業が暗号資産サービスに参入した。例えば、ペイパルや、BNYメロンによるカストディサービスの参入をはじめ、テスラやマイクロストラテジーのビットコイン購入など、名だたるインフルエンサーのネームバリューと、ビットコインの根幹になっている価値3点が融合する形となった。
国家レベルでは、エルサルバドルや中央アフリカでは、ビットコインが法定通貨となっている。
つまり、インフルエンサーのネームバリューと影響力により、ブロックチェーン技術以外からの「信頼性」が創造された。
5 ウォール街論理の市場価値
これまで個人投資家や、新興国(中国等)の富裕層が資産逃避を目的に、ビットコインに投資をしてきた。しかし、2020年以降、主要な買い手に変化が現れた。ヘッジファンドや年金などがビットコイン市場に参入するようになり、「ウォール街論理の市場価値」が創造された。
実際に、株式や債券等を保有する機関投資家がアセットアロケーションを目的にビットコイン購入したり、発行上限が決まっているビットコインを保有することで、インフレヘッジする機関投資家が増えてきている。
例えば、2021年、米国の保険企業がビットコインに投資した金額は約1億ドルで、少額ながら最も規制の厳しい保険業界の行動は、機関投資家の参入を加速させた。
既存金融の論理が、そのままビットコイン市場に持ち込まれることにより、グローバル金融資本特有の、新たな価値が創造されることになった。
まとめ
これまでの話を総括すると、2020年以降、1~3のビットコイン価値の根幹に加え、4.5が追加された。
- ブロックチェーンによる信頼担保
- 発行2100万枚
- 送金の利便性
- インフルエンサーによる価値の創造
- ウォール街論理の市場価値
特にウォール街の参入は、インパクトが大きく、仮に機関投資家が資産の1%をビットコインに振り分けたら、数兆円の資産がビットコインに流入することになる。