短編小説よもぎ2話
平成2年。
青年の名は樋口大樹。高校2年である。
福岡県のとある製鉄工場の社長の息子として生まれた大樹は、地元の盟友と言われた父親の性質を受け継ぎ、成績優秀かつ端正な顔立ちをしており、同級生からは憧れられるとともに同時に嫉妬の心でも見られるようになっていた。
友人関係においては、彼と同じようにクラスの中では比較的優秀でイケイケの優等生たちとグループを組む一方で、不良少年たちの中からは、ガリ勉、整形顔などと野次られ、疎まれる存在であった。自分たちよりも恵まれた存在である大樹を見て、不良少年たちがそのような気持ちになることも無理はない。しかし高校2年の大樹にとっては、なぜここまで自分が嫌われるのか、その想像の力はまだなく、不良少年達からも好かれるような人間になろうと、日々自分磨きに奮闘するのであった。その努力が、周囲の少年たちとの能力の差を拡大させ、むしろより仲が悪くなることも知らずに。