他者の意見を鵜呑みにして投資判断してはいけない

他者の意見を鵜呑みにして投資判断してはいけない

これはなにか

「著名な〇〇さんが推奨しているから〇〇トークンを買った」「××のレポートで推奨されていたから××トークンを買った」などの投資判断について、何に注意すべきか、何に注意すれば質高く他者の意見を参考にできるか、をまとめた記事です。

なぜ書くか

筆者自身、投資判断を行う際に特定の個人やレポートの意見を参考にし、いくつかの成功や失敗、学びがあり、それらを整理し言語化しておくことで自身のより深い学びとするため。

また、同様に特定の個人やレポートを投資判断している人は多く存在しているはずで、学びを言語化し共有することに一定の社会的意義があると判断したため。

大前提

特定の個人や組織の意見を自身の投資判断の材料にすること自体は悪ではないと考えます。特に暗号資産については変化が早く個人ですべての情報をキャッチアップすることは現実的ではありませんし、自身以上に知識や経験のある個人や組織の意見の中で参考になるものは多々あります。巨人の肩には積極的に乗っていくべきでしょう。

ただし、どの個人や組織の意見を参考にすべきか、もしくはすべきでないかの判断自体は注意深く冷静に行うべきです。この記事ではその判断方法についてまとめます。

どの領域において知識や経験が豊富であるか

領域が暗号資産であろうが株式であろうが、投資は市場参加者の90%が損をし、5%がプラマイゼロ、5%が大きくリターンを出すと言われています。そのため市場平均以上にリテラシーが高いことは必須の要件で、最低限の足切りポイントです。

暗号資産での投資判断であれば、意見を参考にするその個人や組織は暗号資産について知識や経験が豊富である必要があります。言葉にすると陳腐ですが、意外とここで間違える人が多くいます。

例えば医者は株式の売買で損を出すケースが多いと言われていますが、これはリテラシーが高いと自身は認識しているが、実際は職業柄、株式の売買について勉強する時間を確保できず認識と実態で乖離が発生してしまうためと言われています。

医者になれる程度にベースのリテラシーが高い個人であっても、投資で成果を出したり他人に確からしいアドバイスができるかは別問題です。

Yahooやアリババなど数々のインターネットベンチャーでの投資を成功させてきたソフトバンクの孫さんでさえ、ビットコインで巨額の損失を出しています。

人生経験が豊富な親や仕事のできる先輩、優れた起業家が投資においても知識や経験が豊富であるとは限りません。株式投資で成功した人が暗号資産でも同様にリターンを得られる保証はありませんし、その反対も同様です。

もっというと、BTCは詳しいがETHについては情報を全然追えてない人、現物取引で大きなリターンを得ているがレバレッジを用いたトレード戦略には知見がない人など、暗号資産ひとつとっても得意領域は非常に細分化されています。

むしろ、細分化された特定の領域について学習し市場平均以上のスキルに到達しているがゆえに、他領域での知識や経験にリソースを投下できず学習できていないとすら言えます。

人はある領域で成果を出すと、万能感を得て成果を得た領域以外でも同様に成果を出せると錯覚し、得意でない領域においても意見するようになります。もちろん知識には他の領域にも応用が効くものもありますが、全てがそうではありません。

「蛇の道は蛇」ではないですが、意見を発する個人がその意見を発した領域において市場平均を上回るような知識や経験があるか、判断が必要です。

どのようにしてその領域において知識や経験が豊富であると判断すればよいか

その意見を発する個人や組織はどの程度その領域にコミットしているのでしょうか。フルタイムでコミットしているのでしょうか、もしくは本業は別にあり一部の興味領域として取り組んでいるのでしょうか。

例えば暗号資産であれば、その個人や組織のフルコミットする業務が暗号資産に関連する業務であるならば、一定の信頼ができそうです。その個人や組織が暗号資産について深く学習する構造的なインセンティブが存在するためです。

その人のツイートの何割がその領域に関するツイートで、記事はどの程度書かれているのでしょうか。知識や経験が豊富であったり、学習することに対して強いインセンティブがあれば必然的にSNSなどウェブでの情報発信も比例して積極的な内容になっているはずです。

その人はいつからその領域にコミットしているのでしょうか。市場が熱狂し始めた最近からなのか、もしくは市場が停滞し注目されていない時期から淡々とコミットしていたのでしょうか。暗号資産なら領域が広く変化が激しいため、一朝一夕で深い理解を得ることは不可能です。いくら確からしいことを言っていても学びはじめて日が浅いのあれば深い理解は期待できません。

その領域のリテラシーは高いが、投資においてはリテラシーが高くないこともある

仮に暗号資産について本質的にリテラシーが高い人・組織であると判断できたとして、その人や組織が暗号資産の投資やトレードについても同様にリテラシーが高いかどうかはまた別問題です。

暗号資産に知見があればファンダメンタル的な理解や分析は優れているかもしれませんが、投資やトレードでリターンを出すためにはそれとはまた別の知識やスキルが必要です。市場心理の理解や自身のマインドコントロール、リスクに関する理解などです。

優れたアナリストが優れた投資家やトレーダーであるとは限らないのです。

「この人は暗号資産に関するリテラシーが高いから、暗号資産に関する投資のアドバイスは確からしいはずだ」と判断してしまうのは早合点です。その領域において知識や経験が豊富であることと、投資やトレードにおいて適切なアドバイスができることはまったく別ものであることを認識しておきましょう。

本当にリテラシーが高くても間違えることはある

仮に暗号資産の投資に関するアドバイスを受けた際に、本当にその人が暗号資産の投資やトレードに知識や経験が豊富な人であったとしても、投資やトレードに絶対はありません。

「この人はリテラシーが高く知識や経験があり確からしいアドバイスだが、どこまでいっても投資やトレードに絶対はないから限定的にしか投資判断に反映させない」といった冷静で慎重な判断が必要です。

なぜ勧めるか、どこにインセンティブがあるか

知識や経験が豊富で一見確からしいアドバイスであったとしても、そのアドバイスするインセンティブがどこにあるのか見極めが必要です。

まず、その人が推奨する銘柄をその人自身も保有している場合は、少なからずバイアスがかかっていると考えるべきです。保有物に対してバイアスがかかり過剰に評価してしまう保有効果など、実験でバイアスの存在は実証されています。

例えば暗号資産についてレポートを提供しているHashHubでは、意図せずともこのようなバイアスが発生してしまうことを見越して、リサーチ業務に関わる個人の保有暗号資産の財務情報の開示を定めています。

そのほかにも、マイニングサービスや取引所の紹介などの場合、紹介者にインセンティブが用意されているケースが多々あります。インセンティブ制度それ自体は否定される制度ではありません。ただし、その個人や組織が発する意見を投資判断に組み入れる側としては、インセンティブが存在しバイアスがかかった意見であることを認識、もしくは予想しておく必要があります。なおかつ、インセンティブの存在有無は相手から事前に共有されることは稀ですし、こちらから質問をしたとしても正確に回答を得られる保証もありません。

「インセンティブの存在は明示されていないが、実はインセンティブが存在しそれ故に意見が偏っている可能性がある」と一定その意見の価値を割り引いておくのが冷静な判断です。

最後に余談ですが、リーマンショック時にショートにてリターンを得たトレーダーを追った書籍「世紀の空売り」では、格付け機関であるS&Pが、競合の格付け機関に顧客をとられたくないが故に正確な監査や評価を行わず、質の低いサブプライムローン債にトリプルAをつけていたとして書かれています。

そのS&Pと同様にサブプライムローン債のトリプルAの評価を下げなかったムーディーズは、ウォーレンバフェットも当時株式を保有しており優良な格付け機関とされていました。そのムーディーズであっても、歪んだインセンティブからは逃れられなかったとするならば、そのほか個人や組織がなんらかのインセンティブによって偏った投資アドバイスをしていたとしてなんの不思議があるのでしょう。

さまざまなインセンティブやバイアスから人は完全に自由になれません。人の意見を参考にし投資判断に組み入れる際には、どのようなインセンティブを持ってその意見を発しているのか深く読み解く必要があります。

下記は世紀の空売りの一部引用です。

尋常なことではない。債券の価値を判定する立場の人間が、その債券についてのしかるべき情報を与えられていないとは……。「なぜかと尋ねたら、『債券の発行者が、情報をくれません』と言うんです」と、ダニエル。「頭に来ましたよ。『出させなきゃ、だめでしょう!』と言ったら、向こうは、そんなことはできないという顔をします。思わずどなりました。『どっちに権限があると思ってるんです?あなたは従わせる立場でしょう。査察官じゃないですか!発行者に、さっさとよこせと言いなさい!!』」。アイズマンが締めくくる。「S&Pは、もし業者にデータを要求したら、ウォール街がこぞってムーディーズに格付けを一任するんじゃないかと、心配してたんだよ」

マイケル・ルイス. 世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3730-3736). Kindle 版. 

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