別れのワイン ~Any Old Port in a Storm~ #3

別れのワイン ~Any Old Port in a Storm~ #3

みなさんこんにちは。今回は、私ならではのワイン目線で「刑事コロンボ」の「別れのワイン」と言う作品についてあれこれと語るシリーズの第三弾となっております(もう誰も覚えていないと思いますが(笑))。ちなみに、第一弾第二弾にご興味のある方はぜひこちらもチェックしてみて下さい。それでは久しぶりに行ってみたいと思います!

まずは、舞台となったカッシーニワインの見学ツアーの場面から。ツアー客と一緒にワイナリー内を見学するコロンボ刑事。するとツアー客がスタッフにワインの種類はどれぐらいあるのかを尋ねます。そして、100種類以上はあるが当社では6種類だと答えると、コロンボ刑事がこう尋ねます。

「シャンパンは?(作っていますか?)」

すると、スタッフの方は「カッシーニ氏がお嫌いで作りません」と答えます。

さて、この一連のやりとりですが、実はとても奥が深い内容なのです。以前にもお話した事がありますが、シャンパンとはフランスのシャンパーニュ地方において、伝統的な製法で造られたスパークリングワインのみ名乗る事が出来る名称です。ですから、この作品の舞台であるカリフォルニアでは当然シャンパンを造る事は出来ません。よって、コロンボ刑事の質問は間違っているように見えます。しかし、当時のアメリカの時代背景からするとこの発言、実は正しいのです(笑)。

どういう事かと言うと、当時のアメリカではスパークリングワインの事を当たり前のようにシャンパンと呼んでいた歴史があるからです。実際、スタッフの方もシャンパンの発言に関しての間違いには特に触れていない事からも、当時は当たり前のようにシャンパンと言う名称が使われていた事が伺えます。これに関しては、かなり深い内容なのでいずれ記事にしてみたいと思っています。

さて、次に取り上げるのは、コロンボ刑事がカッシーニ氏とワインを飲む場面です。カッシーニ氏は抜栓した赤ワインをデカンターに移します。この時彼は、「このワインを2時間半息づかせます。呼吸させるんです」と言っていますが、これはとても理に適っています。ワインは酸素と程よく触れさせる事で香りが開いたり、味わいがまろやかになったりします。

また、「オリを入れない事が大事です」とも言っているので、このワインにはきっとオリがあるのでしょう(品種はカベルネ・ソーヴィニヨンで、非常にタンニンが多い事から、オリが発生しやすいワインと言えます)。デカンターに移し終わった後に、ボトルの底の方に少し残したワイン(オリの部分)を確認している描写は、実際のデカンタージュの時にも見られる仕草なのでさすがだと思いました。

ただ、一つ気になった部分があります。作品の中ではデカンタージュする時に、デカンターの口の部分に布を敷いて、その上からワインを流し入れていました。恐らく、その布をフィルター代わりにして、デカンターの中にオリが入らないようにしているのだと思われます。しかし、実際のデカンタージュではそのような布を使う事はまずないと思います(少なくとも私は見た事がありません)。

通常のデカンタージュは、ワインをデカンターに移す時に、下から光源(昔はろうそく)をボトルのネック部分に当てる事で、ネック部分を通過するワインにオリが混ざっていないかを目視しながら行います(オリが混ざってくると、光で照らしたネック部分に黒い影のような塊が見えるので、それが見えたらボトルを立ててデカンターに移すのをやめます)。

また、布などのフィルターを通せばオリのない澄んだワインにはなりますが、それと同時にオリ以外の有用な成分までフィルターに吸着されてしまう可能性もあるので、私としてはあまりおすすめ出来ない方法です(オリが瓶内で舞ってしまって、もうどうしようもない時には有効な手段ですが(笑))。

次は、カッシーニ氏とコロンボ刑事がワインを飲む別の場面です。コロンボ刑事が出されたワインの品種を言い当てる場面なのですが、この時コロンボ刑事は「バーガンディでピノ・ノワールかガメイ」と答えます。このピノ・ノワールとガメイと言うのはブドウの品種名です(ピノ・ノワールはあの世界一高いロマネ・コンティと同じ品種ですし、ガメイはあのボジョレー・ヌーボーと同じ品種です)。では、バーガンディとは一体何なのでしょうか?

実は、バーガンディとはフランスのワイン銘醸地である「ブルゴーニュ」の英語表現なのです。先程出てきた2品種は、いずれもブルゴーニュ地方の品種なので、そう答えたのでしょう。ちなみに、この作品の冒頭では「クラレット」と言う言葉も出てくるのですが、こちらはフランスのボルドーの赤ワインを意味する言葉です。非常に勉強になります(笑)。

次に私が注目したのは、カッシーニ氏とコロンボ刑事がワインセラー内で会話をする場面です。コロンボ刑事が「ポーの小説にありましたね。何とかの樽って題です」と尋ねると、カッシーニ氏が「アモンティラード」と答えます。

このポーとは、かの有名な小説家のエドガー・アラン・ポー氏の事です。そして、彼が書いた小説に「アモンティラードの樽」と言う作品があるのです。私も今回調べてみて初めて知りました(読んでみたい)。そしてこのアモンティラードとは、スペインの酒精強化ワインであるシェリー酒の種類の1つなのです。こういった細かい部分にもさりげなくワインを絡ませたネタを挟んでくるとは、この作品へのこだわりが感じられます。

と言う事で、今回も最後までたどり着きませんでした(笑)。まあ、なんとなくそんな気はしていましたが(笑)。ここまで来ると、もう自己満足で書いている節もあるので、みなさん置いてきぼりになっているかもしれません(すいません)。またいつか、続編書けたらいいなあと思っています、と言うかここまできたら最後まで完結させたい(笑)。

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